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【映画レビュー】 人生の約束 評価☆☆★★★ (2015年 日本)

『人生の約束』、観たけど面白くない。駄作という程ではないが、非常に平凡な出来で、人には勧められない映画だ。石橋監督今年で70歳、もう映画は撮らなくて良さそうだ。コストの無駄である。


監督デビュー作なのに豪華なキャストなのは、石橋冠監督が日テレのディレクターだったことが大いに影響しているだろう。人脈を活かして出てもらったのがよく分かる。

 

豪華なキャストと書いたけれど、主演の竹野内豊を筆頭に、脇を固める江口洋介西田敏行室井滋・江本明・松坂桃李・優香・ビートたけし等錚々たるもの。

特に竹之内は、剛腕なITベンチャー企業の創業者と、友人に対する思いを示す優しさとを併せ持つ心情をそつなく体現していた。『ビーチボーイズ』で共に人気になった反町隆史とは、演技力にずいぶん差がついた感じ。
江口洋介も海の男という、力強さ・率直さ・愚鈍さをよく演じていて素晴らしかった。
高橋ひかるという新人の女の子は、演技力はどうこう言えるものではないが、非常に顔が清楚で美しい。未だほんの子どもといった感じだけれど、その子どもらしさを出せるところが良い。何でこんな台詞を吐くんだろう?と思う台詞もあるが、子どもって確かにこういう突拍子もないこと言うよねって感じ。
室井滋は非常に良い(この人はいつも上手い)。何という方言か分からないが、自然に方言が出ている。
江本もいつもながら素晴らしいのだが、彼は設定が良くなかったのが惜しい。

松坂は唯一、あまり良くない。ITベンチャー企業みたいな、激しい業界で、主人公である社長の後継者を担うには、弱過ぎる。新井浩文のような目つきの鋭さが欲しかったところ。こんな柔和な人が企業を率いていけるとは到底思えない。知性も感じられなかった。

 

日本の俳優は非常に演技が上手いと思う。世界でも十分に活躍できる人材がいっぱいいる。でも活躍できないのは、英語力がないからだろう。英語さえできれば十分に活躍できる。

しかし、監督はどうかというと、本当に微妙だ。三池崇史みたいなのが国際映画祭に出ていると、本当に落胆する。そして本作の石橋監督もデビュー作とはいえ、日テレでディレクターを何年も経験していただろうに、こんなレベルでは残念だ。

 

何が面白くないかというと、感動作っぽいような触れ込み(CMではそのように見える)なのに、まるで感動しない。感動させるような作りになっていないのだ。

これでは客足が伸びようがない。

 

トーリーは、冒頭からして面白くない。

共同創業者である友達の死をきっかけに、友達が取り組んでいた「ひきまち」(祭りのようなもの)に、主人公も取り組むのだが、そこからして理解できない。

友達からかかってきた電話に一向に出ようとしない剛腕なIT企業である主人公が、なんだっていきなりそこまでの行動に出るのか?竹野内の演技が上手いため違和感は減じられているものの、友達とのエピソードが描かれないまま始まるので、行動にイマイチ共感できないのだ。

俺だったら友達とのエピソードをガツンと描いて、観客の心をストーリーに這わせながら「ひきまち」に取り組ませるだろう。そうしないと観ている者との距離感が開いたままだ。

ビートたけしは、俳優として映画なりドラマなりに参加する時は、演出家に口出しをしないことで知られている。俺も俳優は演出家の駒だと思っている。しかし、たけしは、今回の映画では口出しをしても良かったんじゃないかとすら思える。それくらい、基本的なことができていない映画になっている。

 

それでも駄作ではなく平凡な作品と言えるのはキャストが良かったからだ。キャストに助けられている。しっかりしろ、日本の映画監督!と叫びたくなるような退屈な作品だった。