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【映画レビュー】 ロストイントランスレーション 評価☆☆☆★★ (2003年 米国)

 

ロスト・イン・トランスレーション [DVD]

ロスト・イン・トランスレーション [DVD]

 

 今年もそろそろアカデミー賞の季節がやって来た。ということでビデオ屋を見ていたら、アカデミー賞特集があった。アカデミー賞を受賞した歴代の作品があって、その中でもいくつかの作品が選ばれている。

 

久しぶりにDVDで『ロストイントランスレーション』を観たんだが、初見(DVDになってから直ぐに観たから10年前くらいか)に比べると随分ロマンチックな印象で違和感が残った。とはいえ、テーマと世界観の設定は心憎いと思った。観る者に、具体的な言葉をたくさん紡がせるような映画で、なかなか知的。こういう映画を日本も撮って欲しい・・・

 

日本(といってもほとんど東京)にビジネスで来日した俳優(妻帯者)と、夫がビジネスで来日するので同伴して来た人妻との出会いと別れを描いた。どちらもアメリカ人で、日本語を解さない。

テーマは「人間の孤独」で、日本語を理解できないがゆえに感じる孤独を主軸に、「人間の孤独」を浮かび上がらせている。日本語は象徴的なものであり、ここでは単に「言語による孤独」と言えるだろう。

そして、言語を筆頭に、夫婦間の孤独(主人公もヒロインもどちらも既婚者で、どちらも配偶者とのコミュニケーションに悩まされている)や、男女間の孤独(主人公とヒロインは恋人にはならない。最後にキスをするが、恋愛関係には陥らない。お互いに何か惹かれるものを感じるが成就しない)を描いている。

ということで、日本語が言語の象徴と書いたが、言語そのものが象徴であり、夫婦間や男女間など、色々な事例を用いて、「人間の孤独」を描いている。

このテーマを描くことに本作は成功したようで、興行的にも批評的にも成功している。

 

残念だったのは主人公役を演じたボブ・マーレイが格好良くないところだ。背はそれなりに高いけれど細身で筋肉が無い。この体型で、かつてはアクション映画で活躍していたのだろうか。ハゲているし、顔もしょぼくれていて、シリアスな映画よりも喜劇の方が似合う。さすがにこういう人に若く美しい女性(しかも演じているのは若きスカーレット・ヨハンソン)が惹かれるだろうか?と、疑問が拭えなかった。

映画の設定だから「こういう男がモテるのか?」とも思ったが、もう少し配役に気を配るべきだった。だってかっこよくねえだろ?明らかに!っていうねw

 

だけれど、冒頭に、ロマンチック過ぎると書いたのはマーレイが悪いのではない。「最後のキス」が余計だったんじゃないかと思うのだ。最後のキスの場面で、マーレイがキスを求めた時、ヨハンソンが、「やめて」と言って抵抗することだ。そうすれば、もっと孤独感が出たのに。

あそこでキスをしちゃうから、「人間の孤独」というテーマが少しぼやけるから残念だ。惜しい。

 

この映画を観て、日本人がバカみたいに描かれているといって嫌がる日本人はいるだろう。外国人の目線を気にする民族だからね。しょうがないが、この映画のテーマは日本人をバカにすることではないので・・・