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ももでちっそく

書評・映画レビューが多くなってきましたが、雑記ブログです。口が悪いので酷評することも多いです。すきなひと、さーせんね。

地方の学生を集める難しさ

経済・ビジネス

「知名度が低い企業が、地方でいかに学生を集めるか?」の解決策を知りたく、ネットでいくつかの記事を探していたら、プレジデントのそれが目に留まった。

 

president.jp

 

三幸製菓という、新潟県に本社を構える米菓メーカーの採用手法について賛同的に紹介している記事だ。タイトルも『一流大学生に人気、地方中小企業の「17種類採用法」』とあるので、参考になるかもと思って読み進めた。昨年の6月に書かれた記事である。

 

■学生に「選考方法」を選ばせる企業

 

特徴的なのは、選考方法を、企業ではなく学生が選ぶ点である。その選考方法も、多様性に富んでいる。

 

・おせんべいに対する愛を語る「おせんべい採用」

・新潟出身者以外が新潟好きをアピールする「ニイガタ採用」

・勉強一筋の学生のための「ガリ勉採用」

・最終面接で一度も会わずにスカイプで面接をする「遠距離採用」

 

三幸米菓は、学生に、これらのユニークな選考方法から自分に合ったものを選んで応募してもらうという、採用方法を採っている。学生がメニューを選ぶように選考方法を選ぶのでカフェテリア採用と呼んでいるのだ。

 

直近の16年卒採用では、学生に対して適性検査を実施し、それを元に17種類の選考方法から、その学生に適切な方法を数種類オススメされるというから、独自性が更に高まっていると言えるだろう。しかもオススメされる選考方法のネーミングが人を食ったものなのだ。名付けて「わんこ採用」だの「おとまり採用」だの、果ては「考えな採用」・・・ほとんどギャグじゃないか!

 

俺も長年新卒採用を経験して来たし、他企業の情報を労政時報や人事系の各種雑誌、ネットの記事、リアルな現場の声を聞いて来たけれど、ここまで特徴的な採用手法は寡聞にして知らない。

 

■学生からの知名度の上げ方

 

俺が知りたかったのは知名度が低い企業が、地方でいかに学生を集めるかということだったので、三幸製菓はちょっと違うのかなという印象。スーパーで三幸製菓の商品「雪の宿」や「チーズアーモンド」を見かける。CMも積極的に行っており、タレントも、伊藤淳史松平健などを起用。どこかでCMを見たことがある読者もいるはずだ。

 

記事でも、元来知名度の低さが難点だった。そこで同社は、CMや、会社説明会のパンフレットを”巻物”にするなどの効果で、学生の認知度はかつての25%から、3年間で60%にまで上昇している。ゆえに、同社は既に学生にはそれなりに知名度のある企業なのだ。しかもテレビCMまでできるほどに広告費の予算がある企業だ。

 

どこの企業もCMを打って知名度を上げられる訳ではない。予算の限られている企業なら当然お金を使えないし、あるいはBtoB企業がCMを打っても、学生の知名度向上には繋がるが、必ずしも売上・利益向上に繋がるとはいえない。もちろん、優秀な人材の確保が業績に関連しない訳ではないが、直接業績に結び付くかというと違う。

 

そういう意味では、知名度が低い企業が、地方でいかに学生を集めるかという、俺の疑問には率直に答えてくれる企業ではない。

 

しかしながら、パンフレットを巻物にするというのは、お金を掛けなくても宣伝効果が得られる点で、費用対効果が高い。学生からの知名度を上げるためには参考になるだろう。そんなに予算がない企業だって真似をすることができるから、むしろ多いに参考にしてもらいたい。

 

三井化学東セロという一般的には耳慣れない企業でも、説明会で「イヤフォン」を配布し、人事担当者の声が確実に届くような配慮をしている。

 

今はネットで学生の声が共有化される時代である。三幸製菓や三井化学のような”配慮”は、学生から好意的にネットで拡散されるだろう。金を掛けなくとも宣伝ができる訳だ。知名度の低い企業が認知度を上げるための「金のかからない工夫」は、「工夫」さえ上手くやれば、どんな企業でも実践できるものなのだ。

 

地方の学生を集めるのは本当に難しい。地方の学生は地方に留まるばかりではない。外に行く。東京・名古屋・大阪。大都市にこそ企業が集まっているから、自然にそういった場所に向かってしまう。そういう現象がある中で、地方の学生を集めることの難しさは、なかなか解消できない。

 

三幸製菓のように、CMに掛ける広告費用があれば未だ優位に立てる。しかし、普通はそんな費用は掛けられない。その中でどうしたら学生を集められるか。

 

三幸製菓のやっているパンフレットの配り方は良い。地道だけれど今からでもできる。

カフェテリア採用は、特殊過ぎる。試みとしては面白いがどんな企業もできる訳ではない。ただ、「こんな面白いことをやっている企業があるよ!」という宣伝効果にはなる。それをどうやって伝えて行くかだ。

カフェテリアでなくても、こんな面白い採用方法をやっているよ!とか、それよりもっとダイレクトに、当社は社員がこんなに楽しく仕事をしているよ!とか、そういったことが宣伝出来れば良いのだ。

 

●大学の就職課を使うのか?・・・人事部が相当の数の大学を回らないといけないし、回ったところで、就職課や就職担当の教授が学生に紹介してくれるとも限らない。しかも近年、就職課ではなく、学生はナビや合説等の「直接応募」にシフトしている。だからめちゃくちゃ非効率。

●ナビを活用するのは?・・・マイナビとかリクナビなんかのナビサイトに、高いお金を出して、宣伝してもらうのも良いかもしれない。高いといっても、CMみたいに何千万もするものではない。

 

やはりナビの活用か!?

 

■人事は最初の先輩である

 

同社の試みで好ましくなかったのが、人事が学生に極力会わない方が良いと思っている点だ。以下の通り記事を紹介する。 

 

・地方企業のため、スカイプ面接も多用するが、選んだ採用方法によっては最終面接まで本人に対面しないこともある。「人事は極力、応募者と会わないほうがいいとすら思っています。入社後、一緒に働くのは採用担当ではないですし、やる気や情熱といった曖昧な熱量に気をとられ、その人の特性が見えなくなることもあるからです」

 

とあるが、本当にそうだろうか。スカイプ面接というのも、手法として有りだとは思うが、「学生にとって人事部の社員は最初の先輩」という認識がある俺にとって、”最初の先輩”に会わないことはデメリットだ。

しかも、選んだ選考方法によっては役員まで同社の社員が誰も直接学生と会わないことがあるという。

俺はこういう採用方法は良くないと思う。やはり、役員面接の前に、学生に人事部は会っておくべきだ。繰り返すが、人事部の社員は、学生にとっては最初の先輩なのである。一緒に働くのが採用担当ではないなどという理由で会うことをしないのは、学生にも企業にも機会損失だ。

 

企業にとっては、学生を見るのではなく、学生と「会って」おいた方が良い。

なぜ直接会ってまで面接をするのか?「やる気」や「情熱」といった曖昧な熱量に気をとられるようでは、面接の方法が誤っている。

学生に効果的な質問を投げかけることによって、将来自分の会社で活躍できるかを見定めるために、面接を行う。もちろん、活躍のポイントは会社によって異なる。三幸製菓なら三幸製菓なりの活躍のポイントがあるはずだ。この記事では「欲しい人材」を明確化しているそうだから、それは検討済みだろう。

 

欲しい学生と直接「会う」ことは、曖昧な熱量で済まされることではない。どんなにがんばっても、学生の本音を聞くことには限界がある。人が何を思っているかなんて、「自分」でさえ分かっていないことがあるのだから、まして他人は分からない。こういう、企業から見た「学生の情報の非対称性」は厳然としてある。その前提の上で、如何に情報を仕入れて行くか。それは直接会わなければ分からない。それは、直接学生と会って、本音に近いところを探っていく労力が必要だ。その労力なくして、自分の会社で活躍してくれる人材を確保することなどできない。