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ももでちっそく

書評・映画レビューが多くなってきましたが、雑記ブログです。口が悪いので酷評することも多いです。すきなひと、さーせんね。

不倫の代償は払われていない

性の話

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性の記事ばかりで恐縮だが、俺の知人で、妻に不倫された男がいる。この知人は妻の友人の夫で、俺たち夫婦の共通の知人である。仮に、妻の友人を愛美、その夫を直道として話を進めたい。

 

不倫の話は、俺の妻から聞いた。妻は愛美が俺の家に遊びに来た時に、愛美から「話があるんだけど・・・」と言われて知ったのだった。溢れる言葉は累々と積み重なり、終局が見えないかに感じられるほどだった。

 

愛美は俺たちと同世代の女性で、顔は美人ではないし、性的な魅力も強くないが、性格が明るくひとなつっこい。誰とでも気軽に話せる人で、他人の子どもとも平気で遊ぶ。このひとなつっこさに惹かれていく男性もいることだろう。そう予想させる人だった。

 

愛美は現在結婚8年目、上の子どもは年長で、下に2人の子どもがいる。不倫話を妻から聞いたのは末子が生まれる以前だ。下の2人の子どもは直道似で、上の子は愛美似である。

 

愛美は結婚前に付き合っていた男がいた。年上で、職場で知り合った男性だった。その男とは結婚するつもりがなく、直道と出会って結婚した。しかし直道は男性的な魅力に欠けていて、強引な男ではなかった。愛美はいきなり押し倒してくるような男が好きだったのだ。何をするにも愛美についてきて、従順である。二人の赤ん坊にも優しいが、二人でいるといつもパパとママになってしまう。男と女ではないのだ。新妻にとって、パパとママになるには早過ぎた。

 

ある時、男から久しぶりに連絡が来る。その男のメールアドレスを彼女は削除していなかったのだ。漠然とした不満を抱きながら新婚生活を過ごしていた彼女は、男と再会して直ぐにセックスをしてしまう。そしてその後も何度も逢瀬を重ねてしまうのだった。

愛美はかつてのように男とは恋愛をせず、セックスフレンドとして男と関係を維持し続けた。夫ともセックスはしている。

子どもと遊ぶ誠実な直道を見つめながら、愛美は新婚生活を楽しむ。しかし不倫は辞めることができない。

不倫は道ならぬ行為で、してはならないものということは分かっていながら、辞めることができない。なぜなのか。

 

愛美は厳しい家庭環境の下で育った。大学は出たが、5人きょうだいの二番目の子で、経済的な豊かさはなかった。教育は厳しく、恋愛を厳しく制限された。人としての生きる道を厳しく守るように教育された。しかし、父は、教育への口は出すが、7人家族を養うほどの経済力がなく、経済は母が支えた。愛美には言動が一致しないように見えた。父の言っていることは分かる。しかし現実には、人は、働かねばならないのではないか。

愛美が選んだ夫は、理系の博士号を持つ大企業関連の研究所に勤める研究者で、生活力があった。そのうえ、父のように教育や倫理に厳しいところもある。父の欠陥を補った人物のように見えた。夫の両親は健在で、最近の男女にしては珍しく同居しているが、愛美とも仲が良い。夫の父は大企業を定年まで勤め上げた堅実なビジネスマンだった人であった。

愛美は、自分との育ちの違いを意識するよりも、この人なら、自分が元いた家庭から脱出できると思った。真面目すぎる嫌いはあるが、生活力があるだけマシである。

 

そう思って結婚したのだが、何かが違う。ひっかかる。それは自分が否定してもしきれない、愛美の実家の存在だった。

愛美は俺の妻に言う。

「実家は、今でも仲よくしているけど、実家にいると自分が昔に戻ってしまう気がするの。せっかく今の夫と出会って、変われたのに、また昔に戻る気がする。昔っていうのはね、なんかグロテスクな自分なの・・・前の彼とはね、それこそ毎日のように愛し合っていた。肉欲そのままの愛。でもそれって良くないなって思っていたんだけど、実家にいるとそんな感じがしっくりくる。強圧的な親へのカウンターなんだろうとは思うけど」

実家にいた時は、厳しい教育論を振りかざす父に抵抗するために、どうしても奔放な恋愛をせざるを得なかった。そこから脱するために結婚したのだが、過去の自分は捨てきれない。そこに「何かがひっかかる」気になっていくのだ。

 

不倫相手の男は、自分自身に忠実な男だった。大学出で、それなりに良い会社に勤務してはいるが、自分がやりたいことを率直に行う。だから性にも奔放だった。タイプ的には出会ったその場で性的な行為に及ぶことができる男であった。

夫婦生活にどこか虚しさを感じ、実家にあった時のような厳格さへの抵抗をしたい気持ちが湧き出て来る。どうしても否定できない、自由な行為をすることへの欲望が出て来る。すなわち奔放なセックスを、愛美は求め始めていたのだ。そんな矢先に届いた男からのメールに、いやいやながらも彼女は出かけて行く。さすがに乳児は義父母に預けて行ったのだが。

 

不倫は数カ月で終わった。

自由を恋焦がれる余りに打算を忘れていた愛美は、しょっちゅう携帯を持って歩いていた。どこに行くにも携帯を手放さないし、家でもよく携帯を見ている。誰とメールをしているのか。義父母が時折、愛美が誰かと電話で話しているのを聞く。何と話しているかは聞き取れないけれど、自分たちの前で話さないところがおかしい。

夫の直道は、妻の不貞を疑い、色々と調べてみるが手だてがない。探偵を雇ってみるとあっさり不倫の証拠写真が取れた。ラブホテルに入って行ったところを何枚も撮られたのである。

直道は愛美の実家にも連絡して、不倫の事実を告げた。直道としては、結婚を破たんさせる行為を働いた愛美と離婚したいのではなく、不倫の事実は事実として家族と共有し、もうひとたび夫婦をやりなおしたかったのだ。

 

証拠写真を見せられた愛美は、やけになった。

逆上して、義父母にも憤激して、「離婚してやりますよ。どうぞ、離婚してやりますから」と言った。離婚してやるのは直道の方だと思うのだが、自分に離婚をする・しないの主導権があるように勘違いをしていた。そう思ってしまうのは、夫を騙している自分の方が強い人間のような気がしたからだった。

しかし夫は冷静だった。

愛美とやりなおしたいこと、今後二度と相手の男と会わないこと、子どもは今後もつくっていくこと、自分に至らない点があれば直していくこと、などを言った。

愛美は涙は見せなかったが、大変に感動した。

ここまで自分をコケにした女を前にして、「自分に至らない点があれば直していく」だって?考えられない。やけになり、逆上した自分は何なのだ?自嘲すること自体が恥ずべきことのように思い、愛美は肩を落とした。落胆のためではなく、全てを終わらせられることへの安堵のためだった。

 

妻は愛美から話を聞き終えたあと、今はもう男への未練はないのか?と聞いた。もしくは無性に不倫したくなる衝動に駆られることはないのか?と聞いた。やはりそれはある、という。しかしその度に私は、夫の顔を思い出す。誠実で愛に満ち溢れたその顔を。そうすれば何とか食い止められるというのだ。

 

 

ざっとこんな話である。台詞は俺なりに変えた部分もあるが、ストーリーは間違っていない。妻はこの話を深刻で、感動的な話として俺に言っていた。

 

ただ、どうも腑に落ちないことがある。愛美と直道の長子が愛美に似ていることだ。下の二人の子は直道似なのに、不思議である。もちろん子どもは必ずどちらかに似なければならないということはないが、不倫をした事実を聞いてしまうと、なぜ長子だけが直道に似ていないのかが解せない。というよりも、何かしら妻にも言えぬ秘密が愛美にはあるのではないかと、俺は思うからだ。

 

シリアスで、最後は少しだけ感動的な話で終えられていても、むしろそれがカムフラージュで真実は隠されているかもしれない。似ていないことに全てを帰結させる訳ではないのだが、何かが気になる。俺はだから、妻の話が深刻で、感動的になればなるほど、笑ってしまうのだった。あたかも、葬式という人生の終わりを飾る場で不謹慎にも笑ってしまう蛭子能収のように、俺は笑ってしまう。笑みを隠しきれないのだ。

 

だってそうじゃないか。いくら夫が誠実で愛に満ち溢れているからといって、それでも人は変わるのだろうか?キリストを目の前にした12使途だって、軒並み裏切ったではないか。人間というのはそういうものなのだ。

 

これがもし、本当に、妻にも言えぬ秘密が愛美にあって、長子が男との子であったとしたら、人間の心の闇夜は語り尽くせぬものだと、やはり笑ってしまうばかりである。

 

直道は愛美を本当に許したのだろうか?俺は妻には、直道にはこの話を聞いたことを言わないでくれと言われている。だから聞けないが、本当に許してはいなかったとしたら、不倫の代償は、まだ払われていないと思うのだ。それを考えるとまた俺は、笑ってしまう。