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ももでちっそく

書評・映画レビューが中心のこだわりが強いブログです

窪塚洋介の『沈黙』

mensjoker.jp

 

いよいよ1月21日(土)、マーティン・スコセッシ監督の『沈黙』が公開される。スコセッシの『沈黙』の映画製作については、原作を未読だったにもかかわらず、何年も前から楽しみにして来たが、そこに敬愛する窪塚洋介が出演するのみならず、重要な”キチジロー”役として配役されたというのだから大きな期待をしてしまう。

オーディションの経緯については、リンクのメンズジョーカーに詳しく載っているので、見て欲しい。

 

窪塚は、『沈黙』のオーディションに2度行っているのだ。

 

1度目は惨憺たるもので、控室だと思って入った場所がなんとオーディション会場だった。誤ってガムを噛みながら入場してしまった窪塚は、女性プロデーサーから『出て行け!』と言われたそうだ。演技以前に、プロとしての要件がなっていない俳優と思われたのだろう。

窪塚が語る。

 

オーディションで決まったんですけど、最初は「ああ、これダメだろうな」と思いました。控室だと教えられた場所が、いきなり(オーディションの)会場だったんですよ。そこにガムを噛みながら入ったもんだから、女性プロデューサーに「出て行け!」って怒られて。つたない英語で必死に謝罪したものの、聞き入れてもらえなかった。

 

これでオーディションは不合格だと思ったものの、2年前にまたオーディションに呼ばれた。ここで合格し、出演が決まったらしいが、ここでスコセッシがいかにキチジロー役を重視しているかが語られる。

トータルで5年ほどオーディションをやったそうです。聞けば、キチジローを演じられる役者を20年間探し続けてきたっていうくらい、マーティンにとっては重要な配役で。日本の俳優のほとんどに会ってきたけど出会えなかったらしく。それで「もう一度オーディションをやる」って流れに。

 

池袋ウエストゲートパーク』というよりはテレビゲーム『街』での脇役出演以来といったほうが良いのか、20年近く窪塚を追ってきた俺としては、非常に、感慨深い。

何しろ、巨匠マーティン・スコセッシが、20年間探し続けて来た俳優が、窪塚洋介だからだ。いかに窪塚の演技が天才的だとしても、ここまで追い求められて来た俳優であるとは。無性に、熱いものがこみ上げてくるのを禁じ得ない。

 

しかし窪塚がこのインタビューで語っているキチジロー観を読めば、キチジロー役を勝ち取ったことがむしろ自然にさえ見えて来る。

 

キチジローは信仰のみならず弱い人間として描かれている。しかし、同時に強い部分もある。それは、自分自身についてだ。自分というものの尺度で何事も測っている部分がある。それは俺も原作を読んで感じるところだった。窪塚は以下の様に語る。

 

(キチジローは)単なる弱いだけの人間ではないんじゃないかと思いました。信仰心に対しては弱いものの、自分に対しては強い…弱さと強さは紙一重だと思うし、そういう弱さ、強さのどちらも内在している人間だと、途中で気づいたんだと思います。

 

その通りだとしみじみと感じる。キチジローが単に弱いだけの人間なら、遠藤周作自身が自らを仮託して描くはずもない。それを、身を持って体感し得るからこそキチジロー役を窪塚が勝ち取ったのではないか。 

スコセッシも「力強く演じているだけではなく、心から正直に演じていて、役を心底理解していた。目の前でキチジローが作り上げられていくのを目の当たりにした」と言っている。いかに窪塚が役を理解しているかが分かる。

 

eiga.com

 

既に日本公開まで1カ月を切った『沈黙』。原作は非常に素晴らしい作品で数多くの名作を生んだ遠藤周作の頂点に達する傑作だが、それをスコセッシがどの様に料理するのか。日本映画界の至宝のような食材を手に入れた名匠が素晴らしい映画にしてくれることは、想像に難くない。

 

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