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【書評】 コンサル一年目が学ぶこと 著者:大石哲之 評価☆☆☆★★ (日本)

 

コンサル一年目が学ぶこと

コンサル一年目が学ぶこと

 

 

『コンサル一年目が学ぶこと』という本書のタイトルを見て、コンサルティング業界で働いていない人は、自分には関係がないと思って本書を書棚に戻すかもしれない。しかし「はじめに」で著者が述べている通り、本書は、コンサル業界に限定して書かれた本ではない。そうではなく、業界もキャリアも問わず、社会人一年目でもベテランでも共通して、ビジネスで使い続けることができる、「思考と技術」のエッセンスが盛り込まれた本だ。

ではなぜ、コンサル一年目というタイトルにしたかといえば、(著者自身もアクセンチュア出身であるが)多方面で活躍する外資系コンサル出身者の、その活躍の源泉がこの「思考と技術」であって、これをコンサルティング業界に限定することなく、広く一般に、業界もキャリアも問わず使える内容だからそういうタイトルにしただけのこと。

 

 

「思考と技術」のエッセンスが書かれているが、著者である大石晢之の実体験を踏まえているのと、実践を目指して書かれているため、仕事で使いたくなる内容がふんだんに盛り込まれていた。

 

特に筆者が良いと思ったのは、以下の項目だ。

・結論から話す

・コンサル流検索式読書術

・スピードと質を両立する

 

 

「結論から話す」というのはビジネスの現場では当たり前のことと思われるかもしれないが、案外にできない。大石もその場を取り繕おうとして言葉を紡ぐが、上司に「わたしの質問に対して、取り繕うように何か言わないでいいですから」と指摘されたというエピソードを紹介している。

 

こんな指摘をされる理由は、「取り繕い」は、ほとんど何も言っていないことと同義だからである。結論から話すことに苦手感を持つのは、自身が結論を持っていないこともあるだろう。結論を持つためにはしっかりと考えなければならない。そのためには取り繕うために何か言うより、相手に時間をもらってでも考え、結論を出した方が良い。

 

著者はこう言う。

 

言葉に詰まる質問を浴びたときは、「1、2分考える時間をください」と言ってから、黙って考え、頭の中を整理し、結論から話す

 

たとえ1、2分考える時間をもらったとしても、思いつきの取り繕いの言葉を発するよりは、考えてから答えを出した方がお互いに、生産的な対話を行うことができる。

 

 

「コンサル流検索式読書術」は、ビジネスにおける読書術である。特に時間が限られている中で、新しい仕事をこなさねばならない時に有用だ。

 

まずは、読書の目的を立てる。

そして、次に、「検索」という言葉に現れているように、ウェブを検索するように本の該当箇所だけを拾っていき、重要な部分だけを読む。そしてウェブでの検索でも、多くの関連記事を参照するように、読書においても多くの関連書籍を読むのである。ただし、深読みはしない。広く、浅く読むのである。

あくまで多くの本を読んで、知識を蓄え仕事に役立てることが目的の読み方なので、目的は仕事の成果にある。

 

本書では、年間800冊の本を読んだコンサルタントの秋山ゆかりのことが事例として挙げられているが、一般的なビジネスの現場でそこまで大量の本を読むようなケースはないだろう。

だが、限られた時間の中で、新しい仕事を捌くために、読書をする必要がある場合に、この読書術は役に立つ。延々と時間があるなら別だが、普通は時間がない。刻々と納期は迫っている。だが、新しい仕事を覚えるためには知識が足らなすぎる。どうしたら良いか。本を読むべきである。そんな時、この読書術は役に立つ。限られた時間の中で効率的な仕事をするためには、この検索式読書術は使える。

ネーミングも良いではないか。ウェブの検察のように、読む。そうすれば、読書も、苦ではないだろう。ウェブの検索を「辛いなあ」と思いながら読む人も少ない。

「へぇ、世の中にはこんな意見があるんだ。発見できて楽しい」と思いながら読むはずだ。そんな風に、読書もできたら、仕事はもっと効率的になるはずである。

 

 

最後に「スピードと質を両立する」。

 

仕事をしている時に、時間がない中で、上司から解決策を考えろとか言われるケースは多々ある。そういう時、最初から完璧を求めない、というのがここで言っていることである。

完璧な解決策を立てることに躍起になるのではなく、多少レベルの低い解決策でも構わないので、時間をかけずに、おおまかな策を出してみる。そこでダメなら仮説検証を多角的に重ねて、迅速に出していく。

 

時間をかけて完璧なものを目指すよりも、多少汚くても構わないので、とにかく早く作る。

 

出された解決策が誤ったものであっても、時間をかけないで出した策なので、軌道修正ができる訳である。じっくり考えに考え抜いて、納期間近になって出された解決策が誤っていたら万事休すである。そうではなく、たとえ6割の出来でも良いので解決策を出す。そして軌道修正をかける。要は、最終的な成果物が10割に近い内容であれば良いのである。最初から100点満点を狙うと、時間だけが無駄になくなることになってしまう。

 

著者はクイックアンドダーティという言葉を使って、「スピードと質を両立する」技術を紹介している。汚くても良いから、さっさと成果物を出せ、ということである。そうすれば、いくらでも修正がきく。最後に良いものができれば良いのだから。

 

 

なかなかの良書なのだが、やはりどうしてもエッセンスであることで、本書だけではビジネスに即座に使えるとは言い切れないのが残念なところだ。

ロジックツリーだの仮説思考だのは、本書にも紹介されているが、これだけで実践するための道具とするのは困難だ。やはり類書を読む必要がある。『仮説思考』なんていう、そのものズバリのビジネス書もあるが、何にせよ詳しくはそちらに…とならざるを得ない向きはある。

このような小さい本にそこまで細かいものを求めるべきではないし、本書は親切にも、類書の紹介もしてくれているので、本書の志向するところも網羅的な紹介ではないことは、意識されている。それこそ、広く浅くではあるが、コンサル一年目が学ぶことの手触りを著者の実体験と共に紹介してくれているのは、エッセンスとしては悪くはない。要は、エッセンスから応用して、手を広げていけば良いからだ。

それと、どうしても気になるのが、数字に対する素朴な信頼である。数字を嘘をつかないというが、数字は嘘をつくためのもっともらしい手段として、飾ることも可能であろうが。