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【映画レビュー】 セックス・アンド・ザ・シティ 評価☆☆☆☆★ (2008年 米国)

 

セックス・アンド・ザ・シティ〔ザ・ムービー〕 [DVD]
 

 

40代女性4人の恋愛観を赤裸々に描いた『セックス・アンド・ザ・シティ』の映画化。自ら観たいとは思わなかったが、妻がドラマ版・映画版共にファンなので、付き合いで鑑賞。主人公はキャリー(サラ・ジェシカ・パーカー)だが、4名それぞれにストーリーがある群像劇となっている。恋愛と共に友情の結び付きも強く描いているのが特徴だ。2時間20分の上映時間はちょっと長い気もしたが、妻が観たいというのに「長いよ!」という訳にもいかず、観ることに。

 

 

ストーリーは、一見おしゃべりやファッションといった、表層的な描写で埋めているように見えて、その核心は、女性の心理描写を、時の移ろいと共に丁寧に描いたものだ。女性同士のおしゃべりのシーンが結構あるけれど、タランテイーノ映画のような無意味な会話ではなく、女性4人の結婚、恋愛、友情、ビジネスに関する意味のある会話が多い。

 

伏線をいくつか張っていて、最後に至るまでに回収していくのだが、その回収の仕方がおしゃれだ。例えば、結婚したいと思っていた男ビッグに結婚式をドタキャンされたキャリーは、シャーロットの養子リリーに、「シンデレラ」を読んでやる。そこで、「これはおとぎ話よ。現実はそんなに上手くいかない」という。しかし、映画のラスト、ビッグと結婚前に住んでいたマンションに忘れた美しいブルーのヒールを取りに行った彼女を待っていたのはビッグで、二人は晴れて結ばれるのだが、ヒールが「シンデレラ」のガラスの靴のようで、キャリー自身がシンデレラになっていてロマンティック。

 

もうひとつは、キャリーは、PCが苦手で、メールの整理もアシスタントにやってもらっていたのだが、ビッグからのメールは全て読まずに、パスワードのかかったフォルダに入れていた。ビッグは手紙が苦手で、確かに彼からの謝罪のメールもそっけないものだったので、キャリーは、以降、ビッグからのメールはフォルダに入れてしまって読まないのだった。

しかし、映画のラストで、偶然、ビッグからのメッセージを受け取ることになったキャリーは、ビッグがキャリーに手紙を何通も送っているのに返事がないと言ったことを知る。手紙が苦手だと言っていたビッグが、書いた手紙というのはメールだった。ようやく、メールのいくつかを見てみると、自らを去ったキャリーに対して、別れる前にキャリーが読んでいた「偉人たちのラブレター」という本(という題名だったように記憶)の中から、ベートーヴェンヴォルテールなどのラブレターを引用して、思いを伝えているのであった。手紙が苦手だというビッグが、キャリーが気に入って読んでいた本から引用して思いを伝えるセンスはなかなかしゃれている。

 

 

もうひとつ俺が気に入ったのが、4人の恋愛観の描き方だ。

4人とも恋愛観が一致している訳ではない。シャーロットは最も家庭的。40過ぎで子宝に恵まれないため、中国からリリーという女児を養女にしている。中盤で妊娠し、無事に出産する。夫との関係も良好。だが別にシャーロットだけが勝ち組って訳でもない。それぞれのキャラクターの恋愛観を尊重する。そこがこの映画の良い所だ。

 

ミランダも家庭的な方だが、セックスを求める旦那より仕事を取っちゃうので、浮気されてしまう。ミランダのことが大好きな旦那が「セックスの体位を変えたい」と言ったら、彼女から「早く済ませない?」と言われるんだが、もしこんなこと言われたら、悲しくて、確かに浮気したくもなるよなあ・・・(俺はこんなことを言われたことはありませんが)

ミランダは何ヶ月も夫を許せずにいて、謝罪さえ受け付けないが、自分も歩み寄って、NYの橋の上で再び会えたらやり直そうと言って、望みを果たす。

 

キャリーは格別結婚したかった訳でもないが、10年付き合った超イケメンおじさんのビッグ氏と軽いノリで結婚しようとする。イケメンだけに2度の離婚歴があるビッグは、また失敗しないかと不安になり、電話に出て不安を聞いてくれないキャリーを裏切って結婚式をドタキャンしちゃうのだ。このバカ男!って女性は思うかもしれないが、責任感だけで結婚する訳にはいかんのですよ(笑)

傷心のメキシコ旅行に女友達4人で出掛けたり、アシスタントやミランダたちに話を聞いてもらったりと、キャリーが徐々に心を取り戻していく過程を丹念に描いていく。結果的に、キャリーは、自分は自分のために結婚したかったんだということに自覚して、ビッグとやり直すことを決め始めるのだけれど、この自覚に至るまで心理を掘り下げて描写していて感心した。 

あと、メキシコ旅行でキャリーはノーメイク姿を披露するんだが、普段のキラキラメイクと違って、40代女性らしいありのままの顔で、ある意味凄まじいけれど、リアリティがあるとも思える。メキシコ旅行のシーンでは、シャーロットのウンコ漏らしシーンなどもあり、結構好きだ。

 

サマンサは独身主義の女性なのだが、彼女だけは男と別れて一人になる。一人の男に縛られる生き方ができないので、ようやく解放されて自由になる。これはこれで良いと思う。

 

この映画は、女性4人の群像劇なのに、女性の視点に偏っていないところが秀逸だ。女性4人が集まって、深い友情で結びつけられると「男なんか分かってくれない」ってなりそうで、確かに序盤はそういう雰囲気を醸し出す。が、キャリーやミランダの例に見られる通り、自分にも悪いところがあったっていう視点がある。きちんと客観的な視点があるのだ。

 

 

ということで、ストーリーは素晴らしかったと思うけど、4人に魅力を感じにくいのが難点。4人の物語なのに残念である。4人が良い女たちだったら☆5つでも良かったのだがねぇ。

んまぁ、女性向けの映画ということで、格別男性観客の視点を意識していないのだろうが、それにしても今一つじゃないの?最近俺が大好きなエマ・ワトソンのような可憐な美女は一人も出てきません。・・・というと女性ファンからは苦笑されそうだが、男の観方は、そんなものである。

 

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エマ・ワトソン

 

 

キャリーは背が高くないが、4人の中で最も洗練されている。40歳にしては声もかわいく、美人ではないのにほうっておけない感じは、タレントの梨花みたいな印象なのかな・・・全然タイプじゃないけど、4人の中で主人公然としているのは、納得感はある。篠原涼子みたいな顔だったら良いんだけど。

とはいえ、映画の中でド派手なファッションを披露し続けるキャリーだが、「衣服に着せられている感じ」がしないのが凄い。自分のものにしちゃっている。こういうセンスが女性受けする部分でもあるのかな。普通の人があの人の服装を真似したらチンドン屋みたいになっちゃうから・・・

シャーロットは一番俺の好みの顔をしているが、ビッグに対してキレた時の般若のような顔だけが怖かった。

ミランダはティルダ・スウィントンに似た知性派オバサン。美人ではない。ブサイクな旦那に浮気されちゃう。体はきれいで、映画のラスト、おっぱい丸出しで旦那とセックスしちゃうのが凄い。

サマンサは独身主義者で、4人中最も経済的には成功している。でも映画では49歳という設定で、隣人の男に欲情するオバサンだ。49歳にしては若いが、色恋言ってる年でもねぇよなという感じ。ビジネスで成功している割には色魔みたいでよく分からない。寿司を体に盛り付けて女体盛りを自らやって、彼氏を待つんだけど、馬鹿丸出しだろう。