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【書評】 図解3ステップでできる 小さな会社の人を育てる「人事評価制度」のつくり方 著者:山元浩二 評価☆☆☆★★ (日本)

 

 

中小企業の人事評価制度を支援することになって、書店を渉猟していたら、本書にたどり着いた。今まで私は複数人でプロジェクトを組んで、中堅以上の人事制度の支援を行ったことがあるが、中小企業は初めてだった。だから、もしかして中小企業らしいポイントがあるかもしれないと思って、参考書を探していたのだ。

 

読んでみると驚くなかれ、過半のページが「経営計画書」に割かれているのだ。私は仕事柄人事制度関連の書籍は多数読んでいるが、こんな本は見たことがない。

これを見て、最初私は、こんなことまでに紙幅を費やす必要はないと思った。いかに中小企業といえども、経営計画書に類するものくらいはあるだろうと高をくくっていたからだ。しかし著者の山元浩二は、中小企業の人事制度の専門家である。1000社の会社の人事制度を研究したという、本書の触れ込みもある。

「待てよ・・・高をくくるのはやめ、真摯にこの情報を活かすべきなんじゃないか」

 

そう思って、顔合わせのために顧客を訪問した時に、愚直に本書の情報をもとに、顧客の代表取締役と応対したのだ。まず、最初から会社の代表が出てくることに驚いた。人事担当も出てこない。人事の役員はいるが、代表しかしゃべらない。代表は評価制度に対する熱い思いを語る。

 

そして代表から話を聞き出していると、こんなことが分かった。

「弊社に経営計画書はありません」

 

なるほど。いや、まさか?本書の情報を頭に入れておかなかったら、もしこの情報を聞いた時に、反応に困ったかもしれない。当たり前と思っていたことが通じない時、多少なりとも混乱が生じるものだ。そうなると言葉には滑らかさがなくなり、活力を失ってしまう。商談は上手く進まずにオジャンとなる可能性だってある。危ない。本書を読んでおいて、良かった。結果的にこの企業は私の会社のお客様となってくれた。本書の著者は、中小企業領域における人事評価制度のプロだと改めて感じた。

 

 

本書では、ビジョン型人事評価制度なるものを提案している。中小企業ゆえに、会社のビジョンをストレートに人事評価制度にリンクさせることが出来るからである。

 

会社の経営ビジョンを人事評価制度にリンクするのは、何も著者が提案したものでなくとも、役割等級制度でも出来る。だが、中小企業に特化したことで、本書の提案するビジョン型人事評価制度は、活力を漲らせ、独自性を獲得していく。

 

なぜなら、経営計画書を導入に持っていくからだ。つまり、経営陣のビジョンを明確に設定することを強調し、会社のビジョンと人事評価制度が密着していることを謳う。要は、既存の制度との強調の度合いの違いであるが、ここまでビジョンと評価とを明確に訴えれば、確かに独自の手法と言い得るだろう。

 

大きな組織になればなるほど、あまり経営陣のビジョンと評価とが密着し過ぎるべきではない。もう少し部門に落とし込んだ方が良いだろう。そもそも、大きな組織なら、あまり経営者が大きな存在感を持たない方が組織はうまく回る。○○部などの部門長やその構成員たる社員たちが、自律的に動けなくなるからだ。

 

しかし中小企業のように、トップダウンがこうしろ・ああしろで、経営が上手くいくなら、ビジョン型の方が良いだろう。今後とも参考にさせていただく。