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【映画レビュー】 マスク 評価☆☆☆☆★ (1994年 米国)

 

マスク(字幕版)

マスク(字幕版)

 

 

 

『マスク』は、ジム・キャリー主演のコメディ映画。

お人よしの銀行員スタンリー・イプキス(ジム・キャリー)は、デートに誘いたい相手にチケットを取ってやるが、「実は・・・友人と行きたかったの」などという嘘八百を信じて、チケットを譲ってしまう。車に水をぶっかけられても文句ひとつ言えずニヤニヤし、小うるさいアパートの管理人には思うことがあっても睨むだけで終わる始末。やることなすこと全てがお人好しなのである。

そんなスタンリーは、ある時、川に落ちた男を助けようと、飛び込むが、男だと思ったのは目の迷いで、ゴミの集まりに過ぎなかった。しかしよく見るとゴミの中に緑色の怪しげなマスクを見つけ、それを拾ってアパートに戻る。

彼は、ふとしたことからマスクを被ると、緑色のマスクを付けた変態のような見た目に変わる。それと同時に、彼はハイテションな性格になり、銃弾を受けても死なない、超人的な肉体に変身していたのだ。直情径行的といえるほどに率直な物言いをして、また、女にはストレートなアプローチを試みるようになる。マスクは、スタンリーの欲望を引き出していたのである。

 

主演ジム・キャリーのマシンガントークと、心臓や目玉が飛び出すアクション等アニメ『トムとジェリー』のようなスラップスティックアニメを地で行く映像が持ち味で、終始、高いテンションを維持している。

マスクを被っただけで、軽快かつ大胆な口調と、高いセンスで音楽とダンスを表現するのは至難だが、ジム・キャリーは難なくこなしており、圧倒させられること頻りだ。『マスク』のスラップスティックアニメは今見てもそれほど陳腐には思えないが、『トムとジェリー』を見て、陳腐と思わないことと同様である。映像のコストがそれほどかかっていなくても、スラップスティックは万人共通で笑ってしまうのである。とはいえ、本作は実写映画だから、スラップスティックの演出も、ジム・キャリーの笑いのセンスがずば抜けているからこそ意味のあるものに変わるのだから、『マスク』というコメディ映画に、いかにキャリーの存在がなくてはならないものなのかが察せられる。

 

普段吹き替えでは映画を観ない私だが、コメディ映画は吹き替えを観るようにしている。日本語の方が言葉の面白さを感じ易いからである。『マスク』も、主演のジム・キャリーを演じた、山寺宏一というエキセントリックな演技ができる声優のお陰で、中毒性が高いコメディになっていて、何度も何度も見返してしまうほどだ。


『マスク』を語る上で、キャリーと共に外せないのは、キャメロン・ディアスだろう。この演技が評価されて、以降、一貫して映画スターの道を歩み続けたディアスは、本作と『メリーに首ったけ』によって、清冽で、それでいて肉感的という、独特のコケティッシュな女性像が体現していくのである。最近のディアスは、枯れてしまって、肉感的な魅力を感じにくくなっているのが残念だが、キャリア初期のディアスは、思わずスクリーンに目が釘付け(まさに『マスク』のスタンリー・イプキスのスラップスティックのように)になってしまうほどに、魅力を画面いっぱいに散りばめていたのだった。