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【書評】 スクラップ・アンド・ビルド 著者:羽田圭介 評価☆☆★★★ (日本)

スクラップ・アンド・ビルド

スクラップ・アンド・ビルド

羽田圭介は、又吉直樹芥川賞を同時受賞したのだが、その受賞作品が『スクラップ・アンド・ビルド』である。羽田の小説は『御不浄バトル』しか読んだことがないが、文章に拘りがない作家だと思った。そしてその印象は今回も変わらない。又吉の『火花』は図書館で借りようと思っても人気過ぎて一向に借りられないが、立ち読みした限りは、羽田よりは文章の拘りがあるように感じる。
さて、物語の構成は『御不浄』の方が未だ良かったが、本作は芥川賞らしく(?)、日常を淡々と描いた退屈な物語となっている。ということで、『御不浄』よりは『スクラップ』の方が評価は辛くなる。『御不浄』のレビューはしていないが、あれが☆2.5だとしたら本作は☆2である。私のレビューで☆2.5という評価はないので、代わり映えしない点数になるだろうが。

退屈な物語と書いたがどのくらいつまらないのか。何しろ、新卒でカーディーラーの職に就いていた男が退職して無職となり、母親とその父即ち主人公にとっては祖父と同居しつつ、転職活動を行い、最後に企業から内定を獲得して赴任地のつくばに向けて出発するというただそれだけの物語だからである。途中、太り気味の亜美という恋人と逢引するシーンが出てくるが、羽田は女性に関心がないのか、彼女は何の魅力もない女である。こんな女と頻繁にセックスする場面が描かれるが全く必要性を感じない。結末で出てこなくなるが、彼女とは別れたのだろうか?彼女との関係に関心を持てないので、どうなろうと構わないのだけれど。

ここまで酷評するなら☆1つにすべきなのにしないのは、祖父のキャラクターが良いからである。帯に書かれているほどに祖父と主人公との関係には、介護は関係しないのだが、祖父の九州弁に悲哀があり、それと共に滑稽なので、祖父が出てくるとおかしく感じられるのだ。明らかに本作の中では、叔父と並んで性格が卑屈で、主人公よりもよほど魅力がある。祖父を脇役にせずに主役に持ってきたら、もう少し本作も独創性が増して、語るべきところの多い作品になったかもしれない。