【映画レビュー】 クリーピー・偽りの隣人 評価☆☆★★★(2016年 日本)
- 出版社/メーカー: 松竹
- 発売日: 2016/11/02
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黒沢清のプロフィール
黒沢清監督は1955年生まれの映画監督。カンヌ国際映画祭を初めとして多くの映画祭での受賞歴がある。カンヌのコンペディション部門では、2001年に『回路』で国際批評家連盟賞を受賞している。ある視点部門では『トウキョウソナタ』『岸辺の旅』などで受賞。代表作に『CURE』『回路』『アカルイミライ』『トウキョウソナタ』がある。
黒沢清は立教大学出身で、蓮實重彦の講義を聴講。
私が好きな黒沢作品は『CURE』。
無能な警察
冒頭からしておかしいのだが、主人公の高倉刑事が刑務所にいる容疑者を脱走させたり、容疑者の説得に失敗して体を刺されたりしている。他にも、失踪事件の関係者の家を野上刑事が捜索する場面があるが、野上が捜索して初めて人間の遺体が発見されている。野上以前の警察は何をしていたのか?日本のダメな警察を描こうとしているのか分からないが、ここまで無能さを描く必要があるのだろうか。
ずさんな心理描写
高倉は刑事を退職して大学の教員に転身し、引っ越しをする。すると隣人の西野の様子がおかしいことに気付く。最初に隣人のおかしさに気付いたのは妻の康子である。だが康子は理由なく西野に近付いてしまう。元刑事の妻たるものが、不審な隣人に容易に近付くことがあろうか。しかも不審感を抱きつつ近付くということが?
西野は康子をはじめ、多くの人間の心を自分の意のままに操ることが出来るのだが、その理由はなんと薬。心を操れる薬を注射していたのだ。そんな薬を一体どこで、誰が開発したのか?まるでSFのような世界観の設定である。よくもこんな間抜けな設定にしたものだが、国際映画祭で賞を何度か受賞した監督には、他者からは何も言えないのだろうか?
カルト宗教、ネットワークビジネス、アダルトビデオ(強要問題)などは、人間の欲望を巧みに操ることで成り立っている側面がある。カルトなら、「救われたい」という欲望、ネットワークなら、「金を儲けたい」という欲望、AV強要なら、「芸能界に出たい」という欲望を巧みに操りアリ地獄のように人間を引きずり込む。
西野も薬ではなく人間の欲望を操っていたのなら、面白いと思うのだが、SF的な薬の投与による操縦となると、二の句が継げなくなる。