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【映画レビュー】 闇金ウシジマくん 評価☆☆☆★★ (2012年,日本)

闇金ウシジマくんとは?

闇金ウシジマくん』の映画1作目。2010年にてテレビ放映されたドラマ作品の映画化。原作はビッグコミックスピリッツ掲載のマンガ。監督は山口雅俊で、コロンビア大卒の映画監督・プロデューサー。『闇金ウシジマくん』の映画およびドラマ演出・プロデュースを手掛けている。山口による人間の業の深さをえぐりとるような演出がなければ、『闇金ウシジマくん』は成り立たなかっただろう。

キャスト

主演は山田孝之。やべきょうすけ、崎本大海などドラマでおなじみのキャラクターが続投。ちなみに綾野剛高橋メアリージュンマキタスポーツ等が出演するのは『Part2』から。
その他、AKB48大島優子林遣都岡田義徳新井浩文ムロツヨシ等が出ている。ムロツヨシは安定の大根役者ぶりであり彼が出てくると笑ってしまう。
新井浩文はフードを常に被っている狂った大男の役。山田孝之が出ていた映画『クローズZERO』のリンダマンを彷彿とさせる雰囲気だ。フードを取らないので、声を聞いていないのと新井かどうか分からない。岡田は序盤の出演のみだが、インチキな投資家役で印象を残す。

交差する幼馴染2人のストーリー

大島演じる未来(みこ)と、林演じる純のストーリーが交差する。未来と純は幼馴染である。イベントサークル「バンプス」を運営する華やかな世界に生きる純、ニート生活を送る未来。イベントサークルを成功させる夢を持つ純と、何の行動も起こしていない未来とは、陰と陽のように格差がある。ただし純は、借金を重ねてイベントサークルを維持していて、将来に不安を抱えている青年だ。彼はのしあがるためなら人を蹴落とすことを厭わない若者である。

未来はニートで、出会いカフェで本番なしの疑似デートをしているが、金を積まれても客とはセックスをしないし、売春をしている実母から3Pを持ちかけられても一切応じない。未来と純とは、一見すると陰と陽の関係で、未来は冴えない生活を送っているように見えるけれども、自分なりの倫理観を確保している未来と純とは「明暗が逆転する」ことが予想させられる。

逮捕されるウシジマ社長

純は年齢の割に処世術に長けていて、人脈を使ってウシジマを警察に逮捕させるに至る。ウシジマが逮捕され、釈放されるまでのストーリーが秀逸で、被害届を何とかして取り下げさせるために、ウシジマ・ウシジマの弁護士・柄崎が苦心する。ウシジマの会社カウカウファイナンスは、警察に家宅捜索を受けそうになるまで追い詰められるが最終的には逆転して釈放される。

魅力的に演じ切れなかった大島優子

未来は『闇金ウシジマくん』の中では好意的に描かれている。純粋という程ではないにしろ、確固たる倫理観を持っているがゆえに性は売らないし、金を貸すことはあっても金を借りることはないのだ。純よりもずっと聡明な人間なのだが、大島優子には荷が重すぎたようで、スクリーンに映る彼女から賢さを感じ難かった。知的な賢さというよりも、社会を生き抜くための賢さで、途中で破滅する純よりも聡明である。自分の将来を見通せる広い視野を持っている。ただそれは、未来というキャラクターの持っている人物設定であり、演じる大島がそれを演じ切れたかというと疑問が残る。

表情が一貫して冴えないし、強い意志を持っている人間には見えない。ストーリーの結末は、純がウシジマたちに虐待されて森の中に裸で放置され、未来が細々とではありながらもレストランのウェイトレスとして働くことで将来を見据えるというものだ。だが、未来が金の誘惑に負けずにこられたかについては、大島優子の演技ではあまり説得力がなかったのが残念である。売春をしている実母、しかも娘に3Pを持ちかける異常な母を前にしても、強い意志を持って拒否するような演技を示してもらいたかった。

それには、大島優子の演技力だけではなく、未来という人間の人物設定にも問題がある。彼女が性を売らない、金を借りようとしないという強い意志を持つに至るエピソードが欲しかった。