好きなものと、嫌いなもの

書評・映画レビューが中心のこだわりが強いブログです

【書評】 恋の都 著者:三島由紀夫 評価☆☆★★★ (日本)

恋の都 (ちくま文庫)

恋の都 (ちくま文庫)

ビジネス小説的に女性が活躍する

『恋の都』は三島由紀夫の長編小説でエンターテインメント作品。まゆみというバンドのマネジメントを担う女性の活躍を描く。戦後すぐの日本を舞台に、アメリカ人らを相手に流暢な英語を駆使して仕事をするまゆみは商魂たくましい。

バンドのメンバーが人妻と不倫すれば奔走するなどまゆみの活躍でバンドは維持されている。タイトルが恋愛小説的なので誤解を招くが、本書は、三島によるビジネス小説なのではないかと思った。

美しいまゆみはアメリカ人を翻弄する

まゆみは美しく、男たちは彼女に惹かれていく。しかし相手にされないで終わる。アメリカ人もまゆみを狙うが、彼女はアメリカ人たちを相手にしない。それには理由があって、まゆみにはかつて日本人の恋人があって、第二次大戦で戦死したのだ。だからまゆみはアメリカ人の男を翻弄することで、精神的な復讐を遂げようとした。

戦後すぐの日本を舞台にしているだけに、自身の美をもってアメリカ人を翻弄するまゆみの姿は愛国的にすら見える。彼女は戦争に敗北した日本の復讐を、恋人の戦死と、自分に言い寄るアメリカ人を翻弄することで成し遂げようとした。途中で恋人が実は生きていたということが判明するが、何だかあまり面白くない展開になってしまった。まゆみは、男を空気ほどにも思わない女性であって欲しかったな。