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【映画レビュー】 ヴェノム 監督:ルーベン・フライシャー 評価☆☆☆☆★ (米国)

明るいユーモアが楽しい『ヴェノム』

『ヴェノム』はマーベルコミックを原作としたSFアクション。Sony Picturesの作品で、かつ、世界中でヒットしているという程度の理由で鑑賞したが、アクションの激しさと、コミカルさがほどよく調合されたユーモラスな作品で面白かった。

アクションとコミカルさに訴求ポイントがあるが、どちらかというと、『ヴェノム』の魅力は、迫力あるアクションよりも、明るいユーモアにこそあるだろう。ヴェノムというクリーチャーは、最初はヘドロみたいにグロテスクで、人間に危害を与えそうに見える。しかも、人間に憑依すると無数の牙をむき出しにしたエイリアンのようになる。ダークヒーローの映画かと思う。Sony Picturesの日本のキャッチコピーには、「マーベル史上、最も凶悪なダークヒーロー誕生。」とあり、残酷な映画なのかなという印象を持つ。

だが、そんなグロテスクな化物が主人公のエディ・ブロックと漫才を繰り広げてしまうから驚く。腹が減ったと言ってはそこらの食い物を食い漁り、悪い人をも食べてしまう始末。そのギャップが面白く、会場にも笑いが漏れていた。もちろん私も笑わされた。

ヴェノムの圧倒的存在感

ヴェノムのヘドロ的存在感は圧倒的で、一度見たら忘れられない。グロテスクでいながら主人公と漫才を繰り広げるユーモラスさが相まって、非常に気に入った。

ヴェノムは最初、単なるヘドロでしかない。形を持たないが人に憑依しようとする。しかしなかなか相性が合う人間が現れない。相性が合わないと人間は殺されてしまう。だから非常に不気味な存在として立ち現れる。見る者は少々おじけづく。こいつはとんでもない悪党だと。

ヴェノムははぐれ者でユーモラス

ヴェノムは不気味な存在で、見る者を怖がらせる。とんでもない悪党である。しかし、ヴェノムは、主人公のエディには憑依し彼を殺さなかった。その理由は、エディ同様、彼ははぐれ者だからだった。

はぐれ者同士でウマが合ったから、ヴェノムはエディを殺さない。殺さずに憑依し続けることでヴェノムはようやく人格を表す。それが前段のユーモラスさである。ヴェノムはエディと漫才を繰り広げる。また、ヴェノムは食いしん坊なので何でも食べる。エディに憑依できたことでその食いしん坊ぶりが露見する。エディが犬のように食い物にありつく姿はなかなか滑稽で面白く、ユーモアがある。グロテスクでいながらユーモラスであるヴェノムは、エディと表裏一体となることで、ようやくその魅力を表した。

『ヴェノム』はアクションとコミカルさが魅力だ。いかにもハリウッドのアクション映画という、異次元のハードアクションは食傷気味である。だが『ヴェノム』にはコミカルさがあるので、異次元のハードアクションも悪くない。映画を見終わった後に、少々、アクションシーンを思い出させるほどには悪くないだろう。

映画のラストシーン近くの戦闘は、スピードが早すぎて面白さがよく分からなかったけれど、街での戦闘シーンは丁寧な描写だった。戦闘の規模は小さくなるが、ヴェノムが憑依した後のエディと人間との戦闘もしっかり描かれていた。

悪役はミスキャスト

悪役ドレイクを演じるのは、リズ・アーメッドという男優。アーメッドは、パキスタン系のイギリス人で名門オックスフォード大学卒という輝かしい学歴を持つが、悪役を演じるだけの憎たらしさに欠けている。実験と称して殺人を犯すマッドサイエンティストなのだが、どうにもそうは見えない。賢そうには見えるが、科学の力で世界を豊かにしたいとでも考えてそうに見えた。悪役になりきれていなかったのだろう。どう見ても、マッドサイエンティストに殺されてしまう科学者にしか見えない。