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【書評】 ○○○○○○○○殺人事件 著者:早坂吝 評価☆★★★★ (日本)

○○○○○○○○殺人事件 (講談社ノベルス)

○○○○○○○○殺人事件 (講談社ノベルス)

『○○○○○○○○殺人事件』とは

『○○○○○○○○殺人事件』は、早坂吝のミステリー小説。第50回メフィスト賞受賞作品。

不思議なタイトルの訳は、読者にタイトル当てを迫るというもの。最後まで読むと答えが書いてあるが、知っても爽快感を得られないのであまり意味がない。なんでこんなタイトルにしたんだろうか。

メフィスト賞は、作家の舞城王太郎が受賞したことのある賞だ。私はミステリー作家時代の舞城が好きだったので、それ以来、何となくメフィスト賞作家には関心を持っているが、あまり面白い作品には出会えていない。『○○○○○○○○殺人事件』も同様。文体も世界観もへたくそで、ライトノベルの中でも低俗な部類に入る作品である。

探偵の人物設定がめちゃくちゃな駄作

おとなしい区役所勤務の男・沖が語り手。観光系のブログがきっかけで南国でオフ会をやるようになった男女のグループがいる。沖もその1人。ある時に参加した南国で、メンバーの男女が失踪した。探しているうちに殺人事件が起こる。南国は電話もネットも繋がらず、密室のようになってしまった。犯人はメンバーの中にいるらしい。誰なのか。

一応のミステリー仕立てにはしているのだが、らいちという「事件を解決する探偵」役の人物設定がめちゃくちゃで、小説として成り立っていない作品だった。当初、らいちは脇役のような立ち位置で、女子高生くらいの年齢の少女なのだが、セクシーで淫乱、誰とでも寝る女性として描かれていた。

らいちは、賢そうな雰囲気をつゆほどにも匂わせていなかったのに、小説の後半で急に探偵を気取り始める。探偵は語り手だと思っていた読者は肩透かしをくらう格好だ。しかも、アクション俳優のように格闘技の技術を身に付けており、推理力に長け、ドイツ語の誤りに気付くなど知性を兼ねているというが、想定の範囲外なので理解できない。こんなリアリティの欠片もないような人物設定を、ストーリーの後半に持ち込むとはどうかしている。ライトノベルや、日本のオタク系アニメやゲームのような人物設定ではありがちで、リアリティがないからダメというより、唐突に、ストーリーの後半に持ち込むから不愉快なのだ。

実は私は探偵でした、頭も良いです、知識もありますと言われても・・・理解に苦しむとしか言いようがない。人物設定をストーリー中に変更し、「実はこうでした!」っていうのが許されるなら何でもありじゃないだろうか。

トリックも男性の包茎を1日で手術することが関わっているんだけど、これは笑いを取ろうとしているのか。それにしてはユーモアの欠片もないのだが。作者は、何となくミステリーの知識はあるような書きぶりなのだが、アウトプットがこれじゃあねえ。