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【書評】 サラリーマン漫画の戦後史 著者:真実一郎 評価☆☆☆★★ (日本)

サラリーマン漫画の戦後史 (新書y)

サラリーマン漫画の戦後史を読んだ。

課長島耕作から始まり、色んなサラリーマン漫画について語る。

労務行政っていう雑誌で、就職作家の常見陽平が薦めていたから読んでみたのだ。

島耕作も、最初は社内不倫に明け暮れ、ばれやしないかとビクビクする小心者であったが、段々とビジネスの話が大きくなり、敵役が出てくるなど、人間関係を軸に、物語として楽しめる内容になっている。
しかし、役員になり、社長になるにつれ、中身は現実の経済を投影......ないしは、経済を先取りするような様相を呈する。
日経をマンガで読んでいるようなストーリーに仕上がっている、という訳で、サラリーマン漫画も時代と共に、島耕作の成長と共に、大きく変わっていく。

そんな島耕作をどこから読みとけるか言うと、サラリーマン漫画ならぬサラリーマン小説を書いた源氏鶏太である。
源氏の作品は、仕事については余り触れないのだが、島耕作の初期の様に会社組織内の人間関係を強く描いている。
島耕作の作者の弘兼憲史も、源氏の影響を自覚しているそうだ。

この評論には、いくつものサラリーマン漫画が出てくるが、源氏や、島耕作シリーズにいちいちたち戻っており、基本的には、サラリーマン漫画の戦後史とは、源氏鶏太であり、島耕作であることを認識させられる。
最近では、ブラックジャックによろしくだの、海猿だの、専門職漫画が増えているという現状もあるが、これらも、ストーリーとしては、源氏鶏太であり、島耕作だ。形を変えてはいるが、人間関係なり、人の情なりを描く点では、従来と変わっていない。

やはり、会長まで上り詰めたとはいえ、日経新聞を漫画で描くだけでは、サラリーマン漫画は物足りないのかもしれないって思えた。