好きなものと、嫌いなもの

書評・映画レビューが中心のこだわりが強いブログです

『アウトレイジ最終章』 大友は死なないと予測する

 2017年に『アウトレイジ最終章』が公開されるが、そのストーリーについて憶測すると、ビートたけし演じる大友は、死ぬのか、生きるのかが気にかかる。

 

 

アウトレイジ [DVD]

アウトレイジ [DVD]

 

 

 

rollikgvice.hatenablog.com

 

rollikgvice.hatenablog.com

 

 

 

 

北野監督の映画監督作品は、以下の17作品である。

その男、凶暴につき

・3-4X10月

あの夏、いちばん静かな海

ソナチネ

・みんな~やってるか!

キッズ・リターン

HANA-BI

菊次郎の夏

・BROTHER

Dolls

座頭市

TAKESHIS'

監督・ばんざい!

アキレスと亀

アウトレイジ

アウトレイジビヨンド

・龍三と7人の子分たち

 

このうち、暴力映画と呼べるものは赤字で塗った8つの作品である。ただし『座頭市』は時代劇、他の7つの作品は現代劇である。

俺は冒頭で、『アウトレイジ』の大友は、『最終章』において死ぬのか・生きるのかが気にかかると言った。むしろこれが『最終章』に対する問いであると言っても良い。死ぬのか、生きるのか?

現代劇に限って言えば、『BROTHER』まで、ビートたけしが演じたキャラクターは全て死んでいる。事故死や病死で死ぬキャラクターは一人もおらず、殺されるか、自殺している。『ソナチネ』に象徴されるような虚無的な佇まいからは、「生と死」の対比というよりも「死」そのものへの執着が描かれる。生はあまり重要視されていない。例外的なのは『HANA-BI』で、最終的にたけしが演じるキャラクターは死ぬが、死よりもむしろ愛に執着している。

本日、三島由紀夫の生テープがテレビ局から発見されたことが報道された。その中で三島は、「死の位置がね、肉体の外から中に入ってきた気がする」と語ったことが分かっているが、北野の『BROTHER』までの現代劇からは、まさに三島のように肉体の外から中に入ってきたかのように「死」がしつこく渇望されている。特に主人公を演じるたけしの「死」に向かってストーリーが語られているかのようだ。主人公の「死」をどのように描くか、それは北野映画の重要な表現の一つだ。

headlines.yahoo.co.jp

 

しかし、シリーズ化された『アウトレイジ』で、たけしが演じる大友は死ぬのか?むしろ生きてしまうのではないか?

 

どうしても俺は疑問が拭えない。『BROTHER』までの現代劇においては、皆死んでいる。『アウトレイジ』も1作目においてはあたかも大友が死んだように描かれていたが、2作目では生きていたことが分かり、主人公といいつつも、やや狂言回し的な立ち回りで、仇に対して復讐を遂げる。そして2作目においても大友は死なない。神のように『アウトレイジ』シリーズのキャラクターたちを翻弄してきた片岡刑事(小日向文世)を殺害して、神の物語に終止符を打つ。

 

わざわざ3作品をかけてまで生きながらえさせてきた大友が死ぬというのも確かに面白い。『BROTHER』まで、死を美的に描いてきた北野映画ならば、3作品目において大友を殺すこともあり得る。

 

俺は、大友は、生きると予測する。仮に死ぬとしても、美しく死ぬことはないと考える。

 

理由は2つある。

1つは、『アウトレイジ』1作目において、大友は「生」に執着し、大友組が破滅しそうになると片岡に頼んで自首する。つまり『アウトレイジ』が目指してきたストーリーにおいては、大友は「死」ではなく「生」に執着する。『ビヨンド』においても、韓国のフィクサーに助けられて生き直そうとしたり、木村(中野英雄)に促されてもなかなか復讐をしたがらない。

2つ目は、北野映画の作風の変化である。

座頭市』以降、北野映画では「死」に執着しなくなった。三島流に言えば「死が肉体の外から中に入ってくる」映画を彼は撮らなくなった。と言って生に執着している映画とも言えないが、死を美化し、死を憧憬するとすら見える美的な死にざまは、彼の映画から見られなくなった。『BROTHER』以降初めて、現代を舞台にした暴力映画ではあるが、『座頭市』以降美的な死を描かなくなってきた北野映画の流れからすると、『アウトレイジ最終章』においても、大友は死なない気がするのだ。大友は、生きるのである。

仮に死ぬとしても、「死への執着」を失った北野映画の流れからすれば、美しい死に方はしない。醜いまでも生に拘る大友は、かつての部下水野(椎名桔平)のように、グロテスクに死ぬだけなのではないか。

 

<追記>

アウトレイジビヨンド』にて関西暴力団の会長を演じていた神山繁。最近急逝したが、遺作は『アウトレイジ最終章』なのかなと勝手に思っていたのだ。

そうしたらリンクの記事を見つけたのである。

タイトルに、北野武作品「アウトレイジ最終章」出演断り悔やんでたとあるではないか!!

ちょっと待てッ!!待て~~~!笑

www.daily.co.jp

 

 

オーイ、出演してないの?

最悪・・・なんだぁ出て欲しかったなぁ。それで華麗に散って欲しかった笑