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【映画レビュー】 22年目の告白 私が殺人犯です 監督:入江悠 評価☆☆★★★ (日本)

藤原竜也が全て

『22年目の告白 私が殺人犯です』は藤原竜也主演のスリラー映画。22年前に5人の連続殺人事件が起こる。事件は時効となっていた。ところが、連続殺人事件の真犯人・曾根崎(藤原竜也)が突如、マスコミの前に姿を現す。「私が殺人犯です」という22年前の殺人事件を赤裸々に語った書物を手にして。曾根崎はホテルで記者会見を開き、圧倒的に派手なパフォーマンスを行ってメディアの前に姿を現した。彼は容姿端麗で落ち着いていて、知的なしゃべり方をする。殺人犯にしては、ちょっと外見が良い。

そしてメディアやネット上では、曾根崎をアイコンのように持ち上げる。22年前の事件で尊敬する上司を殺害された牧村(伊藤英明)は、大衆にも、そして曾根崎自身に対して怒りに震えていた。曾根崎はなぜ、22年目のタイミングで告白本を書いたのか?「名を売りたかった」というが、彼の真意は何なのか?

曾根崎を演じた藤原竜也は圧倒的な存在感。彼は人をイライラさせるのが上手い。大衆の面前で牧村に近づき、ニヤニヤしながら口に手をあてて何事かをささやく曾根崎は憎たらしかった。人を5人も殺した癖にミディアムレアのステーキを食べているところなんか、殴りたくなるほどだ。それだけ演技力に長けているのだろう。しかし後半、曾根崎が実は犯人じゃなくて、仲村トオルが演じた仙堂が真犯人だと知った時の絶望感・・・。「仲村トオル、お前じゃ藤原竜也にかなわないよ」と思わず口に出してしまった笑

本作は、藤原竜也による、藤原竜也のための映画なのだろう。彼の演技さえ見ていれば後はどうでも良い。藤原の他には夏帆が良い演技をしていたが、そのくらいだった。

仲村トオルの演技がひどい

仲村トオルの演技がひどかった。一見してシリアスな演技ができる人ではない、ということが露見するひどさだ。不動産業の社会派コメディドラマ『家売るオンナ』での仲村の演技を思い出してしまった。というか、『家売るオンナ』の八代課長そのものの演技だった。戦場を渡り合った経験を持つフリージャーナリストという役柄だが、とてもそんな過酷な環境に忍耐した男とは思えない。そして、人を殺しているように見えない。こんな大根役者に殺人犯を演じさせるのは到底無理な話なのだ。

終盤での藤原竜也との対決シーンがひどい。鬼気迫る迫真の演技を見せる藤原竜也と対峙する仲村トオルは、そこら辺のちょっと見てくれの良いオヤジを間違えて連れて来たかのように思えた。それくらい、仲村トオルは、藤原竜也との演技の落差があり過ぎた。

真犯人は、戦場で、親しいドイツ人ジャーナリストを目の前で殺害された。しかし自分だけは生き残った。そこで真犯人は心にトラウマを抱えて殺人者になっていく。これが動機なのだが、かなり複雑な動機で説明も物足りないのだが、やっぱり仲村トオルが下手過ぎるのが問題だ。彼はシリアスな役を演じる、ということができない。1から演技の勉強をし直した方が良い。

演出がひどい

仲村トオルが演じた真犯人は、藤原竜也演じる曾根崎に出刃包丁で腹を深く刺される。しかし、曾根崎に力で勝って曾根崎を殴ったり蹴ったりと、強烈なアクションを見せる。ありえないだろう。しかも曾根崎は真犯人に恋人を殺されて怒り狂っている。強い殺意を持って、相当に深く、腹を刺しているはずだ。このまま死んでもおかしくない。でも、動いちゃう。こんな演出はギャグである。

22年前の事件のことで、現職刑事がテレビに出る。無理だ。もし、万が一テレビに出るとしても録画だが、生放送という設定。しかも、テレビ出演後も何らのお咎めなし。民間企業でさえ許されない暴挙を警察が認めるはずもないだろう。

こんな映画でも褒めたいところもある。何度か言及したように藤原竜也だ。彼の演技は良い。存在感があるし、この映画自体を全て支配している。あとは、殺人シーンにリアリティがあったこと。本当に殺しているように見えた。この2点で本作は最低評価を免れた。