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わたしを離さないで

『わたしを離さないで』の感想。

キャストは良かった。三浦春馬が圧倒的で主演の綾瀬はるかが霞んでしまったが、それは仕方ないか。綾瀬を友人として愛しているのに、嫌がらせをしてしまう屈折した内面の持ち主を演じた水川あさみは、物語の重要な役どころをしっかり押さえた。

麻生祐未はどうだろうね。なんかギャグっぽい演技に笑っちゃう。もう少し磨いてよ。

残念だったのはストーリー。

死が間近に迫っているというのに、永遠性についての言及がない。カズオ・イシグロってこんな程度?

俺たちだって今健康だから何も考えないけれど、死が間近に迫ったら、生が永遠であって欲しいと思うだろう。思わない訳がない。だって死にたくないだろう。生への執着は永遠性へと繋がる。

来世があるのなら、そこでこそ永遠の生を生きたいと思う。

あるいは、神だ。神の永遠性を俺たちは欲する。死が間近に迫るからこそ、このまま死んで終わりたくない。脱け殻になって終局を迎えたくない。

しかも、このドラマで言っているのは、死が間近に迫るだけではない。同じ人間であるにもかかわらず、奴隷のように自由がない人間=クローンの話なのだ。

永遠性を考えなかったら、ただ、普通の人間に臓器を提供してサヨナラだ。そんな人間いるものか。もしそれがクローン人間なら、到底理解できない。

人間に臓器を提供するだけの人生。そこに疑問を持つのが普通だろうが。俺はもっと人間らしく生きたいと願うだろうが。
人権がなかった人々は皆そうしてきた。なのにこのドラマのクローンは人間らしく生きたいと戦わない。こんなのダメだ。このドラマのクローンとは、人権がない人々のことだ。