どうしようもない会社だ、三菱自動車
■どうしようもない会社だ
新聞、ネット、テレビが騒いでいる。
三菱自動車が日産自動車の傘下に下るとの報道が相次いでいるからだ。今までの悪行を振り返ると、いつ倒産してもおかしくない会社だ。存在する価値があるのかと思えるほどの酷い不祥事の歴史である。日産の傘下に行けるだけでもありがたいと思った方が良いだろう。
毎日新聞のネットの記事で面白いものがあったので紹介する。
http://mainichi.jp/articles/20160427/ddm/008/020/165000c
ここに載っていた三菱グループの幹部の言葉が重く突き刺さる。
「どうしようもない会社だ。私が知ってる範囲でも5度目ぐらいではないか」。
このどうしようもない会社だという発言が、三菱自動車を言い表す言葉として余りにも適切なのだ。
90年代から始まった三菱自動車の不祥事は、2000年代になっても終わりを見せず、一瞬ついえたかに見えた不祥事の目は、2016年に至って爆弾となって衆目にさらされることになった。
こんなどうしようもない会社は、消えてなくなってもおかしくないのだが、日産の傘下に行くことができる。やれやれ。
■自浄作用はなぜ働かない?
記事のタイトルは、「果てなき闇:三菱自動車燃費不正/上 自浄作用働かず グループ内突き放す声」である(4月27日掲載)。
果てなき闇という言葉よりも、「自浄作用働かず」という言葉にこそ、引かれる。三菱自動車は、記事にある通り90年代から00年代にかけての度重なる不祥事にもかかわらず、三菱グループの支援によって、生きながらえてきた。
2014年には生え抜きの社員が社長に昇格。業績が回復し、復活への道のりを歩んでいるように見えた。
その矢先、2016年4月に、日産自動車の指摘により燃費不正問題が明らかとなり今もって世間を騒がせている。
自浄作用はなぜ働かなかったのだろうか?三菱グループの支援を経たとしても、三菱自動車は独立した企業である。どこかの子会社ではない。不正は三菱自動車が浄化せねばならない。
三菱商事出身の益子氏(現会長)が社長に就いたり、金融面では5400億円の融資を受けていた。
しかし企業が不祥事を起こす体質までは変えられない。それはそうだ。体質を変えるのは社員だからだ。それは当然、支援して来た三菱グループにも体質を変える責任の一端はあるだろう。だが、当事者は三菱自動車の社員だ。
不正は一体どのくらい起こったか。毎日新聞の丁寧な「不祥事一覧表」に従いたい。
96年の米子会社のセクハラ問題(50億円で和解)に始まり、97年の総会屋への現金供与問題(幹部が逮捕)、00年のリコール隠し問題、02年のクラッチ系統欠陥による運転者死亡事故(三菱自社長逮捕)、04年のトレーラー脱輪事故による母子死傷事故(三菱ふそうトラック・バス元会長逮捕)、12年のリコール未実施問題など、書くのも憚れるような企業体質である。ガン細胞のように、次から次へと不祥事があふれ出て来る。
96年から始まる不祥事は酷く、04年の段階で倒産しても良いくらいだが、三菱グループの支援で生きながらえて来た。その中で三菱自は、自浄作用を働かせねばならなかった。しかし、できなかった。
変えることのできない企業体質というものなのだろう。この企業体質は人間にとって害である。その害をなくすには、死(倒産)なせるか、生かすにしても外科手術が必要だった。日産は三菱自を傘下に入れるという外科手術の道を選んだ。
トヨタやVWグループに肉薄する自動車業界の再編が起こるという記事も、どこかで見た。しかしこの企業体質を変えるための外科手術の前に台数を競っても何らの意味がない。逆に、体質を変えられなければ、日産ルノー連合が痛手をこうむるのだ。
■新卒社員の不幸
それにしても燃費の不正が明らかになった時期が本当に悪い。悪過ぎる。何しろ4月20日だ。
誰にとってか?
もちろん16年入社の新卒社員である。彼らは意気揚々と三菱自動車に入社したに違いない。過去の不祥事はあれど、業績も回復して来たし、社長は生え抜きの相川氏だ。トヨタやホンダほどではないが、三菱グループの看板を背負える。そんな新卒社員の夢を、入社して1か月もたたずに打ち砕く三菱自動車。もはや自浄作用が働かないのだから、本当はどこかの会社の子会社になった方が良い。そして管理職は全て親会社の社員。そのくらいしないと体質は変わらない。
酷い。新卒社員に賠償請求されてもおかしくないレベルだ。
本当に、どうしようもない会社である。
義弟の夢
俺の義弟(15歳)は、自動車関連の仕事に就きたいらしい。技術者になりたいということだ。これは中学に入ったあたりから言っているので、嘘ではない。それで工業高校に行きたいと言う。本来的には大学を出た方が良いけれど、「勉強が嫌い」でどうしても大学まで勉強を続けられないのだから、仕方がない。無理に勉強をする必要はないのだ。
理系の勉強が苦手というが、そんなんで自動車関連の仕事に就けるのか疑問だ。しかしながら、要は「自動車関連の仕事に就きたい」という思いが重要である。勉強などは後からいくらでもできるようになる。「思い」がなければ、成績の良さをどこにも活かすことができない。
そういう意味では、義弟の思いがあれば、そのためには工業高校の勉強はできるようになるだろう。思いだけでは就職できないことを知るだろう。就職のためには勉強をしていなければならない。むしろ成績が良くなければならない。
あくまでも勉強ができることというのは、夢を叶えるための手段だ。
勉強ができることが目的になると、何になって良いか分からない人間になってしまう。大学に入って初めて就職先を考えるという、愚挙を犯す。どんな仕事に就きたいか分からないなら、大学に進学する必要はない。学費の無駄だ。別に高卒で構わない。
どうして医学部や看護学部など専門職コースでないと、就職先を考えられないのか?「こういうコースに進みたい」から大学に進学するのでなければおかしい。勉強ができることが目的になると、こんなふうに、何になって良いか分からない人間になるのだ。
そういう意味で言えば、義弟は、こうなりたいという夢がハッキリしている。であればこそ、工業高校に進学したいという。
今は勉強ができないかもしれない。しかも理系の勉強が苦手かも知れない。大学入試ではないので、工業高校の入試は易しいだろう。しかし自動車関連の会社で技術者になるということは、入学後の勉強をがんばらねばならない。苦手な理系の勉強を克服せねばならない。
しかし思いだ。思いこそは目的である。
思いさえあれば、手段は後からついてくる。手段とは勉強だ。勉強はいつでもできるようになる。その手段を携えて、夢を叶えることができる。
義弟の夢を、俺は応援したい。
地方の学生を集める難しさ
「知名度が低い企業が、地方でいかに学生を集めるか?」の解決策を知りたく、ネットでいくつかの記事を探していたら、プレジデントのそれが目に留まった。
三幸製菓という、新潟県に本社を構える米菓メーカーの採用手法について賛同的に紹介している記事だ。タイトルも『一流大学生に人気、地方中小企業の「17種類採用法」』とあるので、参考になるかもと思って読み進めた。昨年の6月に書かれた記事である。
■学生に「選考方法」を選ばせる企業
特徴的なのは、選考方法を、企業ではなく学生が選ぶ点である。その選考方法も、多様性に富んでいる。
・おせんべいに対する愛を語る「おせんべい採用」
・新潟出身者以外が新潟好きをアピールする「ニイガタ採用」
・勉強一筋の学生のための「ガリ勉採用」
・最終面接で一度も会わずにスカイプで面接をする「遠距離採用」
三幸米菓は、学生に、これらのユニークな選考方法から自分に合ったものを選んで応募してもらうという、採用方法を採っている。学生がメニューを選ぶように選考方法を選ぶのでカフェテリア採用と呼んでいるのだ。
直近の16年卒採用では、学生に対して適性検査を実施し、それを元に17種類の選考方法から、その学生に適切な方法を数種類オススメされるというから、独自性が更に高まっていると言えるだろう。しかもオススメされる選考方法のネーミングが人を食ったものなのだ。名付けて「わんこ採用」だの「おとまり採用」だの、果ては「考えな採用」・・・ほとんどギャグじゃないか!
俺も長年新卒採用を経験して来たし、他企業の情報を労政時報や人事系の各種雑誌、ネットの記事、リアルな現場の声を聞いて来たけれど、ここまで特徴的な採用手法は寡聞にして知らない。
■学生からの知名度の上げ方
俺が知りたかったのは知名度が低い企業が、地方でいかに学生を集めるかということだったので、三幸製菓はちょっと違うのかなという印象。スーパーで三幸製菓の商品「雪の宿」や「チーズアーモンド」を見かける。CMも積極的に行っており、タレントも、伊藤淳史・松平健などを起用。どこかでCMを見たことがある読者もいるはずだ。
記事でも、元来知名度の低さが難点だった。そこで同社は、CMや、会社説明会のパンフレットを”巻物”にするなどの効果で、学生の認知度はかつての25%から、3年間で60%にまで上昇している。ゆえに、同社は既に学生にはそれなりに知名度のある企業なのだ。しかもテレビCMまでできるほどに広告費の予算がある企業だ。
どこの企業もCMを打って知名度を上げられる訳ではない。予算の限られている企業なら当然お金を使えないし、あるいはBtoB企業がCMを打っても、学生の知名度向上には繋がるが、必ずしも売上・利益向上に繋がるとはいえない。もちろん、優秀な人材の確保が業績に関連しない訳ではないが、直接業績に結び付くかというと違う。
そういう意味では、知名度が低い企業が、地方でいかに学生を集めるかという、俺の疑問には率直に答えてくれる企業ではない。
しかしながら、パンフレットを巻物にするというのは、お金を掛けなくても宣伝効果が得られる点で、費用対効果が高い。学生からの知名度を上げるためには参考になるだろう。そんなに予算がない企業だって真似をすることができるから、むしろ多いに参考にしてもらいたい。
三井化学東セロという一般的には耳慣れない企業でも、説明会で「イヤフォン」を配布し、人事担当者の声が確実に届くような配慮をしている。
今はネットで学生の声が共有化される時代である。三幸製菓や三井化学のような”配慮”は、学生から好意的にネットで拡散されるだろう。金を掛けなくとも宣伝ができる訳だ。知名度の低い企業が認知度を上げるための「金のかからない工夫」は、「工夫」さえ上手くやれば、どんな企業でも実践できるものなのだ。
地方の学生を集めるのは本当に難しい。地方の学生は地方に留まるばかりではない。外に行く。東京・名古屋・大阪。大都市にこそ企業が集まっているから、自然にそういった場所に向かってしまう。そういう現象がある中で、地方の学生を集めることの難しさは、なかなか解消できない。
三幸製菓のように、CMに掛ける広告費用があれば未だ優位に立てる。しかし、普通はそんな費用は掛けられない。その中でどうしたら学生を集められるか。
三幸製菓のやっているパンフレットの配り方は良い。地道だけれど今からでもできる。
カフェテリア採用は、特殊過ぎる。試みとしては面白いがどんな企業もできる訳ではない。ただ、「こんな面白いことをやっている企業があるよ!」という宣伝効果にはなる。それをどうやって伝えて行くかだ。
カフェテリアでなくても、こんな面白い採用方法をやっているよ!とか、それよりもっとダイレクトに、当社は社員がこんなに楽しく仕事をしているよ!とか、そういったことが宣伝出来れば良いのだ。
●大学の就職課を使うのか?・・・人事部が相当の数の大学を回らないといけないし、回ったところで、就職課や就職担当の教授が学生に紹介してくれるとも限らない。しかも近年、就職課ではなく、学生はナビや合説等の「直接応募」にシフトしている。だからめちゃくちゃ非効率。
●ナビを活用するのは?・・・マイナビとかリクナビなんかのナビサイトに、高いお金を出して、宣伝してもらうのも良いかもしれない。高いといっても、CMみたいに何千万もするものではない。
やはりナビの活用か!?
■人事は最初の先輩である
同社の試みで好ましくなかったのが、人事が学生に極力会わない方が良いと思っている点だ。以下の通り記事を紹介する。
・地方企業のため、スカイプ面接も多用するが、選んだ採用方法によっては最終面接まで本人に対面しないこともある。「人事は極力、応募者と会わないほうがいいとすら思っています。入社後、一緒に働くのは採用担当ではないですし、やる気や情熱といった曖昧な熱量に気をとられ、その人の特性が見えなくなることもあるからです」
とあるが、本当にそうだろうか。スカイプ面接というのも、手法として有りだとは思うが、「学生にとって人事部の社員は最初の先輩」という認識がある俺にとって、”最初の先輩”に会わないことはデメリットだ。
しかも、選んだ選考方法によっては役員まで同社の社員が誰も直接学生と会わないことがあるという。
俺はこういう採用方法は良くないと思う。やはり、役員面接の前に、学生に人事部は会っておくべきだ。繰り返すが、人事部の社員は、学生にとっては最初の先輩なのである。一緒に働くのが採用担当ではないなどという理由で会うことをしないのは、学生にも企業にも機会損失だ。
企業にとっては、学生を見るのではなく、学生と「会って」おいた方が良い。
なぜ直接会ってまで面接をするのか?「やる気」や「情熱」といった曖昧な熱量に気をとられるようでは、面接の方法が誤っている。
学生に効果的な質問を投げかけることによって、将来自分の会社で活躍できるかを見定めるために、面接を行う。もちろん、活躍のポイントは会社によって異なる。三幸製菓なら三幸製菓なりの活躍のポイントがあるはずだ。この記事では「欲しい人材」を明確化しているそうだから、それは検討済みだろう。
欲しい学生と直接「会う」ことは、曖昧な熱量で済まされることではない。どんなにがんばっても、学生の本音を聞くことには限界がある。人が何を思っているかなんて、「自分」でさえ分かっていないことがあるのだから、まして他人は分からない。こういう、企業から見た「学生の情報の非対称性」は厳然としてある。その前提の上で、如何に情報を仕入れて行くか。それは直接会わなければ分からない。それは、直接学生と会って、本音に近いところを探っていく労力が必要だ。その労力なくして、自分の会社で活躍してくれる人材を確保することなどできない。