好きなものと、嫌いなもの

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美味い立ち食いそば屋は

外食で美味いものには、なかなか出会えない。それはそうだ。外で食うものには当たり外れがあるからだ。家で妻が作ってくれる定番の味ではない。

立ち食いそばなら大した違いはないだろう。だいたい美味いはずだ...そう思う人はほとんど外食をしないか、食事そのものに関心がないか...そういう人だろう。立ち食いそばは、基本的にはほとんど美味しくないのだ。

作り置きのテンプラに、さっと茹でるだけのそば。そんなものが美味しい訳がないのだ。

しかし、時おり美味い店に出くわす。なぜだろう。ああこれなら通っても良いかなと思わせる立ち食いそば屋。

最近は立ち食いそば屋と言いながら、立ち席がほとんど無いような店があるが、金額は立ち食いそば屋だ。つまり、かけそばが300円前後で、かき揚げ天そばが400円から500円の店だ。それなら、座る席ばかりでも立ち食いそば屋であろう。

俺が好きな立ち食いそば屋は、小諸そば、しぶそば、吉そばの3店である。

しかしである。これらの3店について、なぜ美味しいかについて、明確で相手を納得させられるような言葉で説明することができないのだ。
小諸そばは薬味が無料で、大盛りの値段も安いから...といっても、そば自体について触れていない。

では...と不思議に思っていると、たまたま出張の帰りに寄った立ち食いそばが不味く、そのために美味い店との差を考えることができたのだった。ようやく言葉にすることができるのである。

それは、不味い立ち食いそばは、そばが不味いということだ。当たり前じゃないかと非難を受けそうだが、不味い立ち食いそばのそばは、汁とそばとの味が分離している。そして、立ち食いそばが基本的に美味しくないのは、このためである。そばと汁を一緒に食っているのに、そばはそばだけ、汁は汁だけ食っているような気分になるのだ。

だから俺は、初めて行く店ではそばはまず食べない。うどんを食べるのである。うどんならそばほどの外れに出くわすことはない。塩辛いのは嫌だが、うどん自体が味が濃すぎなくても食べられるので、関東風の汁でもそばみたいに、汁とそばとが分離する等ということはない。ちゃんとうどんには味が付いている。

出張で立ち寄ったそば屋も、そばと汁とが見事に分離していた。あぁ、なんだって今日に限ってうどんを頼まなかったのかと後悔したものである。しかし、美味しくないそばと、3店のそばのような美味しいそば屋との違いに気付けたのだから、良しとしよう。普段、初めて行く立ち食いそば屋ではうどんしか食べないのにそばを食ったからこそ、知ることができた事実なのであるから。