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【書評】 予想どおりに不合理 ダン・アリエリー 評価☆☆☆☆★ (米国)

 

予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」

予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」

 

 

 

予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 増補版

予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 増補版

 

 

『予想どおりに不合理』は、副題が示すように、不合理に行動する人間を経済学的に明かした本だ。但し、この「経済学的に」という言葉には留保が付く。著者のアリエリーが本の中で「伝統的な経済学」と「行動経済学」とを区別して語っている通り、経済学的にではなく、不合理に行動する人間を、行動経済学的に明かした本である。

 

増補版の帯に書かれているように、

・無料!に払いすぎてしまう「ゼロコストのコスト」

・おためしセットに魅了される「高価な所有意識」

 

など、「あっ、そういやぁこういう体験って俺にもあるけどナゼ?なのかよく分かってないよな」的な事例をふんだんに盛り込んで、予想どおりに不合理に動く人間の姿を、経済行動学的に明かしている。

 

事例の面白さもさることながら、訳者が翻訳する文章も、アリエリーの軽妙な原文を想像させる躍動的な言葉で構築され、読書の楽しみを味わえる。

 

そうそう、一見、不合理は予想すべくもないはずだが、本書は予想どおりに不合理なのだと説く。つまりは、人間が予想どおりに合理的に行動するのが伝統的な経済学の定義だとすれば、行動経済学は予想どおりに不合理に行動するのが人間だと、定義する。

 

惜しむらくは、興味深い本であるが、理論的な側面は欠いており、納得感はさほどでもない。それにしては、単行本にして400ページは、ちと長すぎる嫌いがある。