好きなものと、嫌いなもの

書評・映画レビューが中心のこだわりが強いブログです

【映画レビュー】 モアナと伝説の海 評価☆☆☆★★ (2016年 米国)

www.disney.co.jp

 

子どもにせがまれてわざわざ劇場で鑑賞。『ラ・ラ・ランド』をもう一度劇場で観たいところだったが、偶には家族サービス(という言葉が大嫌いなのだが)もしないといけない。ディズニー映画で「退屈」だと思ったことがないので良いのだけれど。『プリキュア』だの『ポケモン』だの『名探偵コナン』だったら劇場ではなかなか鑑賞させ難い(そういう親のエゴはいけないと思うけれど)。

 

さて、劇場でディズニーを観たのは『アナと雪の女王』以来。『アナ雪』は社会現象になるほどの大ヒットだったが、『モアナ』はそこまではいかないだろう。『アナ雪』は何しろ「二人のプリンセス」が非常にかわいくビジュアルも良くて、個性的で、本当の愛が「姉妹の愛」というアンチラブストーリーみたいな物語が良くて、ヒット曲とあいまって人気が出たのだが、『モアナ』はそこまでヒットする仕掛けがない。

 

世界観は作り込みが深いものの華やかさに欠けるし、キャラクターにも愛着が持ち難い。主人公のモアナは良いと思うが、あとは余り好感が持てない。マスコットキャラの鶏ヘイヘイは悪くないがインパクトが弱かった。マウイという半神半人の主要キャラクターは、強靭な肉体を誇るのは面白いが、見た目が巨大な猪みたいだし、武器が巨大な釣り針というのも洗練されていないようだ。マウイは色々な動物に化けることが出来るのだが、男が見て格好いいと思える動物に変化しない。海だから難しいのだろうが、ライオンとか虎とかだったら興奮するのだが。唯一、オオワシは良いと思ったが。

 

しかしながら、ストーリーは大変面白かった。『アナ雪』と比較して冒頭の文章を始めたので改めてここでも比べると、『アナ雪』よりもストーリーには深みがあるだろう。

独特なのは、16歳の女の子が主人公なのに、ストーリーが非常に男っぽくて、神話的、あるいは旧約聖書的。アクションシーンも相当に多い。

『モアナ』は、使命感に溢れる女の子が、島という、彼女にとっての文字通り「世界」を救う物語なのだ。ラスト、モアナが海に命じて海に道を作らせてそこを彼女が歩くシーンには、彼女の姿が、旧約のイスラエル人を率いるモーゼに見えて仕方なかった。モアナは、幼い頃から「海に選ばれた女性」なのだがこれも「神に召命された人間」にも類似する。

 

島の皆が、特に村長であるモアナの父が、「海のサンゴ礁の先」には行ってはいけないと言っている。しかしそんな掟を盲目的に信じるのではなく、彼女は自ら考えて突き進む。島にとって本当に良いことは何かと?盲目ではなく自ら思索して道を切り開いた時、彼女は海に選ばれた女性としての自覚を持って、勇ましく大海原へと旅立っていく。

モアナの祖母と母がモアナの背中を押すが、むしろキーとなるのは祖母だ。祖母は序盤で死を迎えるが、彼女がモアナに大海原へと突き進む可能性を与えてくれたからだ。彼女は背中にエイのタトゥーを彫っている。彼女は死んだらエイになって戻ってくるとモアナに言う。大海原の冒険中、モアナは絶望するシーンがあるが、そこで祖母はエイになって彼女の前に現れる。まるで天使のようなのだ。「海に選ばれた女性」や「天使のようなエイ」など非常に神話的で美しいストーリーと言えるだろう。主人公が女性で、舞台もハワイっぽいが、ストーリーは男らしい。

 

トーリーに加えて、幾度となく流れる主題歌も神秘的で美しかった。キャラクターに魅力がもう少しあれば、評価はより高まっただろう。