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【書評】 教養としての官能小説案内 著者:永田守弘 評価☆★★★★ (日本)

教養としての官能小説案内 (ちくま新書)

教養としての官能小説案内 (ちくま新書)

本書のどこに教養があるのか分からない。タイトルの選定を誤ったのではないかと思うばかり。特に学術的な裏付けがある訳でもなく、そもそも学問へのなんらの言及がある訳でもなく、古今東西の文学との比較がある訳でも、社会学的な見地から述べている訳でもなく、大部分を官能小説の歴史と称して、淡々と小説を紹介するだけの本書に教養があるとは思えない。しかも、紹介されている官能小説は、文章が稚拙であまりエロいとは感じられないものばかりだ。これらのどこが官能小説なのか…著者の小説に対する選定ミスなのか。

面白いと思ったのは、引用された小説家の中でマシだと思われた(つまり官能を刺激された)のは、女性作家だったということ。男性作家の小説で引用されたものは、恣意的で、野暮ったくて、官能的ではなかった。リアリティも感じられない。官能小説は文芸の一種だから、それなりの知性とか、臨場感のある描写が書けないと書けないのだろう。谷崎潤一郎の『鍵』を、久しぶりに読みたくなった。