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【映画レビュー】 龍三と七人の子分たち 評価☆☆☆☆★ (2015年 日本)

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北野武の「龍三と七人の子分たち」を観た。北野武っぽくはないが、面白かった。

アウトレイジビヨンド」から3年、今回は珍しくコメディタッチの映画。北野はコメディ映画があまり上手ではないが、今回は成功。「みんな~、やってるか!」はひたすら寒かったのに。

元ヤクザの老人8人が、京浜連合というヤクザまがいの犯罪集団と戦う話。元ヤクザといっても裕福な暮らしをしている人間はおらず、近藤正臣演じるマサは生活保護を受けている。生活保護を受けているヤクザって何なのってこの設定が笑える。主人公の龍三も、息子夫婦に疎まれつつ同居しており、自分の蓄えなんか大してない。

物語は、龍三がオレオレ詐欺に引っ掛かるところから始まる。オレオレ詐欺を仕切っているのが暴走族あがりの京浜連合だ。龍三はオレオレ詐欺に引っ掛かるが、お金がないので、仕方なく指を詰めようとしたら、金の受取人が怖くて逃げてしまう。そこから龍三たちと京浜連合との戦いが始まるのだが、戦うといっても、終盤で、中尾彬演じるモキチが京浜連合に殺害されるまでは、そこまで火花を散らしてはいない。

この京浜連合のリーダーを務めている西という男を演じるのが安田顕で、眼に凄みがあってダンディで素晴らしい。「ホタルノヒカリ」で山田ねえさんと付き合っている男を演じたあのなよなよした安田顕とは思えない。この京浜連合には、その他に「ソナチネ」の高橋役を演じて良いなぁと思っていた矢島健一も久々に出ているし、下條アトムも出ている。下條は北野武と同じくらいの年齢なのに若く見えるのがすごい。50代と思ったら、68才だって。

それで、この京浜連合が至るところに勢力を伸ばしていて、オレオレ詐欺はやるし、無料の浄水器と抱き合わせの布団の押し売り販売もやる。布団の押し売り販売は、龍三がかつて世話人なった企業もそれに手を染めるほどに営業が拡大しているのだ。

そしてキャバクラも経営していて、そこで働いている女の子にモキチの孫娘がいる。西に、孫娘をさらってくるように言われた孫娘の彼氏が、憔悴してモキチに相談すると、モキチは逆上して西を殺害しようとするが、返り討ちにあって殺される。中尾彬は「アウトレイジビヨンド」でも殺されたが、よく死ぬ役者だ。

そしてさっきも書いたように、モキチの死をきっかけに、龍三たちは西のいるビルに殴り込みをかけ、遂にはバスジャックした路線バスとベンツのカーチェイスをするラストシーンに繋がっていく。殴り込みのシーンは子どものケンカの様なシーンで、お互いに刃物や銃で戦い合うのだが、モキチの死体を車椅子に乗せて盾にしてしまうので、モキチの体は銃で撃ち抜かれたり、刃物で刺されたりする。龍三の仲間で五寸釘を武器にしている男がいて、モキチの頭は五寸釘だらけにされる。

この、モキチの遺体を損壊するシーンは笑いどころで、ぶっちゃけ不謹慎ではあるが五寸釘だの銃だの、ナイフだの、あらゆる武器でいたぶられるモキチの遺体は無残だが、コントの様に描かれている。

カーチェイスシーンは素晴らしく、この作品の中で圧巻のシーンだ。ビジネス街や商店街を縦横無尽に走り抜き、西の乗るベンツを潰しにかかるバスは、狂気的な龍三とその仲間の異常さを際立たせると共に笑わせる。何せ路線バスだ。途中で停留所があれば停まるし、停まって乗ってくる乗客の中に下條アトムがいる。乗ったはいいが龍三たちがバスジャックしたバスだと知った時の下條の狼狽は堪らない。

この映画で良くなかったのは、セスナの突撃か。バスのカーチェイスシーンよりも前に描かれるセスナ突撃は、何かに配慮している様に見えてならなかった。

龍三の仲間であるヤスが運転するセスナが京浜連合の本社ビルに突っ込もうとしたが、パイロットが飛行機キチガイで、目前に米軍の空母を発見してしまい、空母に着陸してしまう。空母を発見して興奮するのは良いのだが、着陸はないだろう。米軍に撃ち落とされるくらいの演出が見たかった。それか、米軍が銃撃に失敗して、セスナが空母に突撃するとか。ビルへの突撃を描けなかったのは、何だろう。今更ながらに同時多発テロを意識せざるを得ないのか。突撃してセスナが爆発してしまう、そんな暴力的なシーンを夢見たが、叶わなかったのは残念だ。

あともう一点、競馬のシーンで、指が二本ない龍三が、馬券を買ってくるモキチに、「5-5」の大穴馬券を買え!と、両手を広げてジェスチャーするシーン。これはギャグのネタが読めてしまった。指がないから「3-5」と勘違いして馬券を買ってしまったモキチを笑うシーンに繋がるのだが、北野らしい演出ではあるが、これはネタが読めてしまって笑えない。

この作品のMVPは、何といっても龍三役を演じた藤竜也だ。70代なのにこの色気は不思議だ。説明がつかない。北野は男をセクシーに撮るのが上手い。だから淀川も北野ファンだったのかな…
次点は近藤正臣安田顕。近藤は画像に載っている白髪の俳優だ。一番ヤクザっぽい。